クレーンも使ってすべて分解 東京メトロ「鉄道車両の車検」に密着(写真54枚)
「4年」と「60万km」どっちで検査?
定期検査の周期は、車両の種類や用途によって異なります。定期検査告示によると、旅客列車で使われている電車(新幹線を除く)の場合、3か月を超えない範囲で状態・機能検査を行わなければなりません。重要部検査は「4年又は当該車両の走行距離が60万キロメートルを超えない期間のいずれか短い期間」と定められています。全般検査の検査周期は8年です。
重要部検査の周期は少し複雑ですが、1日あたり100km走行する電車の場合、60万kmに達するのは6000日=16年と160日後ですから、「4年」と「16年160日」を比較して「いずれか短い期間」、つまり「4年」が重要部検査の実施時期になります。
一方、1日で500km走行するような電車の場合、60万kmに達するのは約3年3か月後。4年になる前に重要部検査を行わなければなりません。名古屋~長野間の特急「ワイドビューしなの」で使われている383系電車の場合、片道の運行距離は約250kmですから、毎日1往復(約500km)するだけで4年より短い期間で重要部検査の時期を迎えます。
このほか、定期検査とは別に「臨時検査」「列車検査」と呼ばれる検査もあります。臨時検査は、車両を製造したり改造したときに最初に行う検査のこと。この臨時検査と試運転を行わないと、お客を乗せる営業運転で使うことができません。
列車検査は「仕業検査」とも呼ばれている日常的な検査で、通常の運転スケジュールから外すことなく、おもな部品をチェックするものです。その周期は鉄道事業者がそれぞれ独自に定めていて、東京メトロの場合は10日を超えない範囲で行っています。
このように、鉄道車両の検査は簡単なものから大がかりなものまで複数の種類があり、周期も車両の種類に応じて定められています。さまざまな種類の検査を繰り返し行うことで、大勢の乗客の命を預かる鉄道車両の安全性が保たれているのです。
【了】
Writer: 草町義和(鉄道ニュースサイト記者)
鉄道誌の編集やウェブサイト制作業を経て鉄道ライターに。2020年から鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』所属記者。おもな研究分野は廃線や未成線、鉄道新線の建設や路線計画。鉄道誌『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)などに寄稿。おもな著書に『鉄道計画は変わる。』(交通新聞社)など。
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