消える「東京メトロ唯一の座席」 南北線開業から四半世紀、初期車両リニューアルで

開業から約25年が経過した東京メトロ南北線。その当初に登場した南北線用の9000系電車がリニューアルされ、2016年8月から運行を開始します。「冷えすぎない」といった快適性の向上など、さまざまな改良が施されていますが、このリニューアルにより「東京メトロ唯一の座席」が姿を消しそうです。

南北線開業後、四半世紀の変化に対応

 東京都心を南北へ貫くように目黒(東京都品川区)と赤羽岩淵駅(東京都北区)を結び、東急目黒線の日吉駅(横浜市港北区)、埼玉高速鉄道線の浦和美園駅(さいたま市緑区)まで直通運転を行っている東京メトロの南北線。1991(平成3)年11月に駒込駅(東京都豊島区)と赤羽岩淵駅のあいだから開業し、約25年が経過しました。

 これにともない、東京メトロはその開業初期に登場した南北線9000系電車の1次車(最初に製造されたグループ)について、2020年度までに順次リニューアルを実施。対象の8編成48両(01編成から08編成)のうち、最初に完成した編成(05編成)の営業運転を2016年8月15日(月)から開始します。

リニューアルされた南北線9000系の1次車(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 リニューアルのポイント、そのひとつは「デザイン」です。従来、側面へ一直線に描かれていたラインが、「ウエーブデザイン」になりました。東京メトロによると、現状の面影を残しつつ、「柔らかさ」と「躍動感」を表現したとのこと。そして、側面上部へ新たに追加されたラインも注目です。近年、鉄道で整備が進む“あるもの”を考慮し、入れられました。

 こうした側面のラインには、「何線の電車か?」をひと目でわかるようにし、誤乗車を防ぐ目的も存在。しかし、駅に線路への転落や列車との接触を防ぐ「ホームドア」があると、車両側面の比較的低い位置に書かれているラインは、ホームドアに隠れてしまうことがあります。

リニューアルされる前の南北線9000系1次車(2009年10月、恵 知仁撮影)。

 南北線のホームドアは背の高い壁状のもの(フルハイト式)ですが、透明な部分が多く、側面のラインが車両の低い位置に入っていても問題ありません。しかし、2000(平成12)年頃に直通運転を開始した東急目黒線、埼玉高速鉄道線のホームドアは背が低いですが(ハーフハイト式)、透明ではなく、低い位置にあるラインが見えない状態になっていました。そのため今回、高い位置にもラインが追加されたわけです。

南北線らしくなった車内 各車両にフリースペース、エアコンの「冷えすぎ」防止策も

 リニューアルされた南北線9000系の車内は、乗降用ドアと座席の仕切り部分に同線のラインカラーである「エメラルドグリーン」のアクセントが加えられ、床もライトグリーン系に。外観同様、ひと目で「南北線」だと分かるようになりました。

ラインカラー「エメラルドグリーン」を用いるなど、南北線らしくなった9000系リニューアル車の車内(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 そして座席の仕切り部分が、座っている人とドア横に立つ人の干渉を防ぐよう大型化されたほか、優先席部分のつり革を低くする、ドア上の案内表示器をシンプルなLEDからより多くの案内、情報を提供できる液晶モニター(2台)にする、車いすやベビーカー、大きな荷物を持っての乗車を考慮し、6両編成の全車両にフリースペースを1か所ずつ設けるなど、快適性向上が図られています。

 また夏、すいている電車に乗ったとき、冷房の効きすぎで寒いと感じたことのある人、少なからずいるかもしれません。リニューアルされた9000系では、乗車率が低い場合に送風機の運転を「低速」にし、“冷えすぎないようにする”という改良も行われました。

各車両へフリースペースが設置された南北線9000系のリニューアル車(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 省エネ化も図られています。線路上空の架線から取り入れた電気の電圧などを変換し、車内の照明や冷暖房に使える電気を作る「補助電源装置(SIV)」に、「並列同期/休止運転方式」を採用。車内で必要とされる電気が少ないときは、6両編成に2台搭載しているSIVのうち、1台を自動的に休止することで、無駄なエネルギーを使わないですむようにされました。

 電車は、線路上空の架線から取り入れた電気を、そのまま車内の照明や冷暖房に使うのではありません。ちなみに、南北線の架線に流れているのは直流1500ボルトの電気です。

消える「東京メトロ唯一の座席」

 今回の9000系リニューアルにあたって、「東京メトロ唯一」の“珍しいもの”が消えます。「クロスシート」、向かい合わせの4人席です。

東京メトロで唯一だったクロスシートが、フリースペースなどに変わる(画像出典:東京メトロ)。

 南北線9000系のうち、このたびリニューアルの対象になった初期編成(1次車)は、各車両にクロスシートがあります。東京メトロ車両に設けられているクロスシートは、これが唯一です。しかし、今回のリニューアルでそれがフリースペースなどに変更されるため、このまま行くと「東京メトロで唯一のクロスシート」が近い将来、姿を消すことになります。

 ちなみに南北線の9000系で、クロスシートがあるのは初期編成である1次車の8編成のみで、それ以降に追加製造された15編成には製造当初から設置されていません。

リニューアルされた南北線9000系1次車の運転席。ワンマン運転が可能(2016年8月、恵 知仁撮影)。

 東京メトロによると、駒込~赤羽岩淵間の部分開業から南北線が順次延伸し、直通運転も行うなど利用者が多くなったことなどから、クロスシートの採用をとりやめたそうです。一般的に、クロスシートのメリットは快適性、デメリットは、場所をとるため混雑する状況には向いていないこと、とされます。

 クロスシートからフリースペースへの変更。開業から約25年、この四半世紀で変化した南北線の状況と、社会におけるバリアフリー意識の高まりを象徴するもの、といえるかもしれません。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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コメント

8件のコメント

  1. 個人的には南北線の車両は相鉄直通後に10両編成が運行されるようになったら全ての編成の一部車両に転換クロスシートを入れた方が良いと思う。
    南北線や三田線の容量だと10両編成なら入れても問題ない混雑率だから。
    それに相鉄車両もクロスシートを入れるから余計にそう感じる。

    • 東京の過密を何とかしてほしいものですが、行くならせめて長距離通勤者に配慮してほしいですね。

  2. 乗車時間の短い地下鉄のクロスシートの廃止がそんなに大きなトピックとは思わない。
    それよりも、乗車時間の長いローカル線車両のロングシート化の方が余程問題だ。

    • ローカル線で古っっくさい国鉄時代とかの車両が走り続けてることがそれ以前の問題。旧車好きのマニアしか喜ばない。

  3. 先月まで10年ほど、クロスシートは、始発の特権で御園からよく使ってました。最近のスマホのガキの肘攻撃が少なくてよかったのに。残念です。
    8両に早く増やさないのかな?

    • 使わなくても同じ事で返して邪魔な事に気付かせて辞めさせれば、みんなの為に成るんだよ。

  4. 2020年のオリンピックまでにクロスシートがなくなるのは残念だけどフリースペースが増設されるのは混雑緩和対策の一環なので仕方ありません。南北線のラインが上部に付くのは5次車以来で車番が移設されないのは残念です。

  5. 見出しの内容を最終ページに載せてクリックを稼いでるが、思ってた事と違ったら欺されたと感じて、次は無視される事に気付いて無い。