アメリカ宇宙軍創設、実際のところは? そのお仕事の中身と実現の可能性

宇宙軍はここから生まれる? 「アメリカ空軍宇宙コマンド」とは

 2018年現在、アメリカ軍のなかで上記のような任務をこなしているのが、1982(昭和57)年に設立された「空軍宇宙コマンド」です。

 空軍宇宙コマンドは、宇宙空間とサイバー空間のふたつを主たる活動領域とする組織で、現在は世界134ヶ所の施設で約3万6000人の人々がそれぞれの任務に従事しています。空軍宇宙コマンドは、弾道ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星や通信衛星などアメリカ国防総省が有する全ての衛星を指揮統制していて、それによって刻々と変化する状況に即した効果的な衛星の運用を可能にしています。これによって、地上、海上、空中にいるアメリカ軍部隊が必要とする衛星の機能を適切なタイミングに提供することができるのです。

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静止軌道配備型の早期警戒用人工衛星、SBIRS-GEO(画像:アメリカ空軍)。

 また、空軍宇宙コマンドが運用しているのは衛星だけではありません。その衛星を宇宙空間に配置するためのロケットを打ち上げる施設や、弾道ミサイルの探知追跡や衛星などの位置確認、宇宙ゴミの監視などに用いるために地上に設置されている巨大なレーダーなども同コマンドの配下にある部隊が運用しています。とくに宇宙ゴミの監視は重要で、衛星との衝突を避けるためにも今現在宇宙ゴミがどこにあるのかを確認する必要があるのです。

トランプ大統領は、自身が目指す宇宙軍を「空軍とは切り離すが、同等の存在だ」と説明しましたが、これはまさにこの空軍宇宙コマンドを指しているものと思われます。

 ちなみに、おなじく宇宙空間を活動領域とする政府組織に「NASA(アメリカ航空宇宙局)」がありますが、NASAは宇宙の平和利用を目指してさまざまな研究や実験、さらに惑星探査などを行っている組織で、その活動内容はあくまでも非軍事的なものです。そのため、もし仮に宇宙軍が創設されたとしても、お互いの任務が大きく重複するということはないでしょう。

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コメント

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1件のコメント

  1. アメリカ軍のシステムを考えればフォースユーザに当たる統合軍の機能別で戦略軍が今でも宇宙系の仕事をしている。
    ここに書いているのはフォースプロバイダーの話で実は空軍の宇宙コマンドだけではなく陸軍宇宙・ミサイル防衛コマンドや陸軍部隊戦略コマンド、海兵隊戦略コマンド、海軍艦隊総軍(戦略潜水艦)、空軍地球規模攻撃軍団があって、お仕事をするユーザーが必要とする戦力をプロバイダーが準備、訓練をすると分けられている。
    その辺を理解してないとぐちゃぐちゃな話になるし、宇宙軍が独立して各軍から取り上げると、訓練/準備が分かれてぐちゃぐちゃになるだろうな。
    マティス国防長官が懸念しているのはそういう点に関して懸念してるのだろう。
    戦略原潜の乗組員を海軍と宇宙軍が教育するのは二度手間という話になる。