「熊本空港アクセス鉄道」実現か? 一度は「断念」された構想が再浮上したワケ

再検討は「分岐」「モノレール」「市電」の3案

 その代わり、当面は既存の鉄道とバスを組み合わせることでアクセスの改善が図られることになりました。2011(平成23)年、豊肥本線の肥後大津駅と空港を結ぶシャトルバス「空港ライナー」の運行が始まっています。2017(平成29)年には肥後大津駅に「阿蘇くまもと空港駅」という愛称が付けられ、空港の「最寄駅」であることをアピールしています。

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「阿蘇くまもと空港駅」の愛称が付けられた肥後大津駅。空港行きのシャトルバスが発車を待っている(2018年3月、草町義和撮影)。

 一方、熊本空港の利用客数は検討凍結後の2009(平成21)年度以降、280万人台で推移していましたが、2012(平成24)年度ごろから急速に増えました。2015年度には過去最高の約318万人を記録。熊本地震が発生した2016年度こそ300万人を割り込みましたが、2017年度は訪日外国人観光客による国際線利用者の大幅増加もあって334万人となり、過去最高記録を更新しました。

 アクセス鉄道の検討を凍結した10年ほど前に比べれば、鉄道でアクセスする人数も増える可能性が高く、採算性の向上が見込めます。また、熊本市の中心部と空港を直通するリムジンバスは朝夕を中心に遅れや乗り残しが慢性的に発生。定時輸送が可能な交通機関、つまり鉄道整備の必要性が高まってきたといえます。

 こうしたことから熊本県は、2018年度の一般会計当初予算に空港アクセス改善のための調査費(900万円)を計上。空港運営の民営化(2020年予定)や新しいターミナルビルの完成(2022年度)を控えたタイミングにあわせ、アクセス鉄道の整備を再び目指すことにしたのです。

 熊本県は鉄道によるアクセス改善について、(1)豊肥本線から分岐して空港まで延伸、(2)モノレールを熊本市の中心部から空港まで建設、(3)熊本市電(路面電車)の延伸の3案を比較検討しています。ただ、モノレールは建設距離が長くなるうえに、ほかの鉄道路線からの直通運転ができません。市電は普通の鉄道に比べて速度が遅くなる可能性が高そうです。

 となると、今回の再検討も、豊肥本線の分岐延伸案を基本に進められているのではないかと思われます。

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コメント

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4件のコメント

  1. 豊肥本線をうまく使えば熊本のみならず、大分へのアクセスも向上するのでは?

  2. 昔は三里木駅から分岐する案だったが、今は光の森駅からのほうが実用的で速い。
    費用にしても空港関連施設なので、空港会計特別会計を使うように航空局に働きかければ良い。
    今、大規模な空港工事は福岡空港しかないので、余っているはず。

    • たしかに、掲載された地図の案は明らかに遠回りで到底お勧めできるものではありませんね。

  3. 鉄道よりも、まずは熊本都心部~熊本インター~空港を経由して「中九州横断道路」につながる高規格道路の整備の方が重要ではないだろうか。市内から空港へは一般道路しかなく、バス運行の定時性にも欠けているのではないだろうか。利用者が増えたとはいえ、都心部へ直結していない鉄道よりも直結できているバスの方に注力した方が賢明。福岡などへの高速バスの定時性向上にも役立つ。バスに関しては便数をもっと増やせばいいだけのこと。