実際どう戦う? 車輪の戦車、16式機動戦闘車 総火演に見えたその運用の一端とは

どのような場面でどのように運用される? その役割

 機動戦闘車の役割は、大きく分けてふたつです。

 ひとつ目は、航空機や輸送艦に搭載されて迅速に目的地まで展開し、「先遣部隊の火力」として運用されるということです。そしてもうひとつが、味方戦車が追う敵の勢力を「側面から叩く」ということです。

 ひとつ目の「先遣部隊の火力」とは、迅速に展開できる利点を活かして、侵攻してきた敵に対し、戦闘の準備時間を与えることなく強制的に戦闘に参加させるほどの火力を発揮するということです。

 敵の準備が終わらない状態でこちらから攻撃を開始するということは、敵の指揮系統を混乱させ、そして充分な準備ができていない状態で敵を戦闘へ強制参加させるということになります。そうなれば敵はもちろん、充分な火力を発揮できないことでしょう。

 ふたつ目の「側面から叩く」とは、たとえば侵攻してきた敵が戦場から離脱するような際に、味方の戦車はその後を追いかけるわけですが、16MCVはその高い機動力を活かして、敵の逃げる経路に先回りし攻撃するといったような運用や状況を意味します。

 こうした運用ができる16MCVの登場によって、陸上自衛隊はより幅の広い戦術行動を取ることができるようになったのです。

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高い機動性を展示する16MCV。操縦は8輪車独特のモノがあるそうで、乗りこなすにはコツがいるという(矢作真弓撮影)。

 この16MCVですが、その車体をベースとした派生形の開発計画もあると聞きます。ただし、実際にどうなるかは未知数で、試作・研究で終わる可能性もあるとのことです。

 実際のところ、人員輸送型にした場合は後部の扉が小さいために、車体後部の形状を改良しないと迅速な人員の昇降は無理でしょう。

 砲弾を積んだ迫撃砲型にしても、車内のスペースの都合から、そこまで多くの砲弾を乗せることができるのか疑問です。

 105mmライフル砲を機関砲に乗せかえるのであれば、砲塔の変更と少しの改良でなんとかなりそうです。そうした場合、圧倒的に火力が落ちてしまうのですが、96式装輪装甲車の火力を代替することはできそうです。

 登場したばかりの16MCVですが、今後もマイナーチェンジを繰り返して、より扱いやすい装備品として、今後の陸上自衛隊を支えていくことになるのでしょう。

 将来装備品である「装輪155mm自走砲」との競演が楽しみです。

【了】

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Writer: 武若雅哉(軍事フォトライター)

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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コメント

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2件のコメント

  1. 「迅速な展開」について疑問があります。

    空輸するには航空優勢の確保が必要でしょうが、列島の防衛戦においてそれは画餅では?ということ。
    また、地球の裏まで展開する米軍であれば、安全な隣国の空港へ運んでも「迅速な展開」と言えるでしょうが、東日本から西日本へ運ぶことが「迅速な展開」という程のものか?ということ。

    ですので、16MCVについても、整地での移動能力が高いことによる「迅速な展開」にとどまるのではないかと思うのですが?

  2. >人員輸送型にした場合は後部の扉が小さいために、車体後部の形状を改良しないと迅速な人員の昇降は無理でしょう

    人員輸送車は三菱が自費開発してるMAVのことだと思うけど
    なんかMCVまんま流用するかのような勘違いしてない?
    公式に写真出てるから見てみてから記事書いて