空対空ミサイル60年、台湾に始まるその歴史とは ガラリと変わった「戦闘機のあり方」

機関砲は風前の灯に?

 そして1970年代末期に登場したAIM-9L第三世代型サイドワインダーはまさに化け物であり、赤外線検知器が著しく高性能化され常温の機体外周部が発する微弱な中赤外線も探知できるようになり、戦闘機の攻撃能力は「相手の後方へ遷移しなくても撃て、しかも全力で回避機動している相手にもほぼ当たる」ようになります。1982(昭和57)年、イスラエル空軍とシリア空軍が交戦した「ベッカー高原上空戦」では、濃尾平野程度の広さしかない空間に対して4日間延べ1000機にも及ぶ戦闘機が激突する高密度の空中戦が勃発するも、おもにAIM-9Lを搭載したイスラエル空軍のF-15やF-16はシリア空軍機84機を撃墜し損害ゼロという圧倒的な戦果を記録しています。

 第四世代型サイドワインダーであるAIM-9Xでは、照準可能な射角は自身の真横に相当する180度に拡張され、そして現行型のAIM-9X-2では360度となりました。AIM-9Xのような前方から大きく外れた方向へ照準する能力を「オフボアサイト攻撃能力」と呼びます。

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イギリス空軍のユーロファイター「タイフーン」。27mm機関砲口が物理的にふさがれてしまった。射撃訓練自体実施していない模様(関 賢太郎撮影)。

 いまやよほどの旧式機でないかぎりオフボアサイト攻撃能力を持った空対空ミサイルの搭載は当たり前となっており、空中戦における機関砲はほとんど過去のものとみなされつつあるようです。特にイギリス空軍のユーロファイター「タイフーン」などは1960年代から70年代の機関砲再認識後の価値観で設計されているため、27mm機関砲こそ搭載していますが、物理的に発射口が塞がれてしまい使用していません。

 とはいえ、機関砲には平時における警告射撃や対地攻撃においてミサイルや爆弾では強すぎる場合など空中戦以外における価値は依然として高く、F-35のうちA型は機関砲を標準搭載していますし、F-35B/C型は機内にこそないものの、対地攻撃用に機関砲ポッドを外付けすることができます。

【了】

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コメント

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2件のコメント

  1. 「遷移」→「占位」ですよね。

  2. ロックオンと言うと言うロマンを殺すオフボアサイト