「日本一の秘境駅」小幌はいま 存続決定から2年、カギは「雰囲気の維持」

町もうるおう仕組みへの模索

 2015(平成27)年に小幌駅廃止の意向が報じられて以来、小幌駅を訪れる人は増加し、一時は1日最大で50人を超える人が訪れました。現在は多くても20人程度で比較的落ち着いています。「日本一の秘境駅」として小幌駅の知名度は上がりましたが、課題もあります。

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小幌駅は月2回程度、豊浦町の職員が訪れ状況を確認している。駅構内に長万部町との町境があり、駅全体を見晴らすこの場所は長万部町側(2018年8月、栗原 景撮影)。
駅構内には監視カメラが設置されている。毎日列車の到着時刻前後をタイマー録画し、訪問者数の統計を取っている(2018年8月、栗原 景撮影)。
小幌駅で撮った自撮り写真を提示すると到達証明書がもらえる。ついでに道の駅で買い物をしたり、温泉に入っていったりしてもらおうというわけだ(2018年8月、栗原 景撮影)。

 それは、町にとって経済的なメリットが少ないこと。多くの旅人は、洞爺や長万部から来て小幌駅に下車し、その後は次の目的地へ去って行きます。豊浦町に滞在する人は極めて少なく、なかなか町にお金が落ちないのです。

 小幌駅の維持にかかる費用は、除雪・清掃費用などを中心に年間約250万円。豊浦町では、ふるさと納税の使い道として「日本一の秘境駅『小幌駅』の存続応援基金」を選択できるようにし、これまでに全国から約3000万円の基金が集まりました。今後大規模な修繕が必要になったとしても、7~8年は維持できる金額です。しかし、いくら小幌駅が有名になっても、町民にとってメリットがなければ、税金を投入する意味はありません。現在のところ議会や町民は小幌駅の維持に好意的ですが、そこまでする意味があるのかという意見もあります。

 そこで、豊浦町が2018年の夏から始めたのが、「豊浦町 小幌駅 秘境到達証明書」の発行です。これは、小幌駅の駅名標を背景に自撮り写真を撮り、豊浦駅近くの「道の駅とようら」か「天然豊浦温泉しおさい」で提示すると、通し番号付きの証明書がもらえるというもの。どちらの施設も豊浦駅から徒歩圏内にあり、小幌駅に立ち寄った後豊浦駅で下車してもらって、なにがしかのお金を使ってもらおうというアイデアです。8月4日からスタートしたこの企画、取材した8月23日までに約100人が発行を受けており、まずは順調な滑り出しを見せています。

 現在、豊浦町は、小幌駅を含むエリアを「北海道遺産」に申請しています。採択されれば小幌駅の価値は一層高まり、永続的な存続に弾みがつくことでしょう。9月6日には北海道胆振東部地震が発生しましたが、若干倒木があったほかは小幌駅に被害はなく、いまも普段通りに訪れることができます。

「日本一の秘境駅」としての雰囲気を守りながら、誰でも安心して訪れられる環境を整備し、町の人々にもメリットをもたらす……。一部の鉄道ファンが知るだけだった小幌駅は、町の玄関に育とうとしています。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. 到達証明書の発行とかカメラ映像で乗降客数を記録するのって、待合室を設置するか否かよりよっぽど「秘境らしい雰囲気」を壊す企画に思えて仕方ないなあ。

  2. 利用客が極端に少ない駅は廃止するのもやむを得ないでしょう。ただし、小幌駅のように地元が費用負担して観光促進に使う秘境駅は残す価値があるかもしれません。

    客の少ない駅廃止の代わりに、乗客がより見込めそうな位置に駅を移設・新設するなどの増収策も忘れないでほしいし、維持困難路線 第4段階 までの路線はJR以外の経営でもいいので 鉄道 として存続できるように願っています。

  3. 北海道の秘境駅を歩いて巡るツアーとかやれそうだね