迎撃ミサイルSM-3最新版、試験成功の意義は? 融和ムードの裏で進む弾道ミサイル対策
日米共同開発の迎撃ミサイルSM-3が、模擬弾道ミサイル標的の撃墜試験に成功しました。弾道ミサイルの脅威排除へ1歩近づいたわけですが、そもそもどういうものか、これにどのような意義があるのかなどを解説します。
迎撃ミサイルSM-3ブロック2Aが迎撃試験に成功
昨今、日本周辺の安全保障環境は大きく変動してきています。たとえば、北朝鮮をめぐっては南北間で融和ムードが醸成されたり、日本自身も、2018年10月25日から27日にかけての安倍総理による中国訪問で日中間の対話ムードが形成されつつあったりします。しかし、その一方で北朝鮮も中国も依然として日本を射程に収める弾道ミサイルを多数配備している状況に変わりはありません。
そうしたなかで、この弾道ミサイルに対抗するために必要不可欠な装備の試験が、日本から遠く離れたハワイで実施されました。
2018年10月26日(金)、ハワイ沖合に浮かぶアメリカ海軍のイージス駆逐艦「ジョン・フィン(DDG-113)」から、1発のミサイルがまばゆい閃光と共に発射され、ハワイのカウアイ島から発射された弾道ミサイルの模擬標的を太平洋のはるか上空で迎撃することに成功しました。このとき「ジョン・フィン」から発射されたミサイルこそ、弾道ミサイルを迎撃するために開発・試験されている新型迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」です。
SM-3ブロック2Aは、日本とアメリカにより共同開発されている迎撃ミサイルで、洋上のイージス艦や地上のイージスアショアから発射され、目標に向かって飛翔する弾道ミサイルを大気圏外やその近傍で迎撃することを任務としています。ちなみに、SM-3ブロック2Aの「ブロック」というのは、分かりやすい言葉に置き換えれば「バージョン」にあたるもので、つまりSM-3というミサイルのなかのどのバージョンなのかを表しているのが、この「ブロック〇〇」という表記です。ブロック2A以外のバージョンとしては、アメリカ海軍と海上自衛隊で運用されているSM-3ブロック1A、同1Bというものがあります。
公表された試験の流れとしては、まずカウアイ島から弾道ミサイルの模擬標的が発射され、これを洋上のアメリカ海軍駆逐艦「ジョン・フィン」がレーダーで探知してSM-3ブロック2Aを発射、目標の迎撃に成功したということです。
どうあっても乗れない乗りもの、ミサイル。ミサイルの前にはどんな兵器もひれ伏します。兵器は国際政治と不可分です。「統一朝鮮」が日本の仮想敵にならない保証はありません。ミサイル防衛の手はまだ休められることはないでしょう。