迎撃ミサイルSM-3最新版、試験成功の意義は? 融和ムードの裏で進む弾道ミサイル対策
失敗は成功の母 順風満帆ではなかった迎撃試験
実はこれまでにSM-3ブロック2Aによる迎撃試験は3回実施されてきました。
1回目は2017年2月にハワイ沖合で実施されたもので、この試験では今回と同じく標的の迎撃に成功しました。しかし、続く2017年6月と2018年1月に行われた試験では失敗しています。のちの調査によって、2017年6月の事例はSM-3ブロック2Aを発射したアメリカ海軍の駆逐艦「ジョンポールジョーンズ」の乗員が犯した迎撃中止信号の送信という人為的なミスによって、2018年1月の事例ではSM-3ブロック2Aの一部部品に不具合があったことによって、それぞれ迎撃に失敗してしまったことが明らかとなっています。
しかし、いずれもSM-3ブロック2A自体に設計上の欠陥があったことは確認されていないため、今回の迎撃試験成功も相まって、SM-3ブロック2Aに関する開発、試験はこのまま進行されることとなっています。
ところで、試験とはいえ迎撃に失敗して、実戦で本当に役に立つのでしょうか。
「失敗は成功の母」という言葉もある通り、成功だけでなく失敗することにも大きな意味があります。試験で失敗すれば、関係者のあいだで当然その原因を必死で検証することになります。その結果、実戦で同じ失敗を繰り返さないようにミサイル自体やその運用に対する改善が行われることになります。つまり、前もって失敗を経験することによって、いざ実戦となった場合にはより確実な活躍が期待できるようになるわけです。
今後SM-3ブロック2Aはさらにさまざまな環境を想定した試験などを実施し、その後アメリカ海軍と海上自衛隊へ順次配備されていくことになります。自衛隊への配備は、予定では2021年から開始されることになっていて、海上自衛隊の「あたご型」「まや型」イージス艦や、陸上自衛隊が運用することとなる「陸上イージス」ことイージスアショアに搭載されるものと思われます。
どうあっても乗れない乗りもの、ミサイル。ミサイルの前にはどんな兵器もひれ伏します。兵器は国際政治と不可分です。「統一朝鮮」が日本の仮想敵にならない保証はありません。ミサイル防衛の手はまだ休められることはないでしょう。