元「日本最長距離を走るバス」運行終了へ 本州~九州の夜行バス、古参の撤退相次ぐ現状(写真22枚)

名古屋発着以上に深刻な関西~九州間

 名古屋発着の夜行高速路線以上に深刻な状況なのが、関西と九州を結ぶ夜行高速バスです。この10年間で次のような路線が運行休止・廃止されており、このなかには「夜行バスのパイオニア」と呼ばれていた路線も含まれています。

●ムーンライト号
・運行事業者:阪急バス→阪急観光バス/西日本鉄道
・区間:京都・大阪・神戸~北九州・福岡
・運行終了:2017年3月

 1983(昭和58)年3月24日に阪急バスと西日本鉄道が共同で運行を開始した夜行バスのパイオニア的存在。国内初の3列独立シート車を投入したことでも有名で、最盛期にはノンストップ便や北九州止まりの便も設定され、1日3往復体制でした。しかし並行する新幹線、航空機の利便性向上や運賃値下げ、カーフェリーの台頭、LCCの就航などで、廃止までの10年間は赤字基調となり、収支改善には至りませんでした。

●ロマン長崎号
・運行事業者:阪急バス→阪急観光バス/長崎県交通局
・区間:大阪梅田・神戸~長崎
・運行終了:2013年5月

 全国で唯一、公営事業者である長崎県交通局(長崎県営バス)が運行する夜行高速バスとしても注目されていた路線で、前出「オランダ号」の競合でもありました。関西地区からの航空路増設などによる利用者数の減少により廃止。これにより、長崎県営バスは本州方面夜行便の運行から撤退しました。

●さつま号
・運行事業者:阪急バス→阪急観光バス/南国交通
・区間:大阪梅田~鹿児島
・運行終了:2012年9月

 運行開始当初はトリプルトラック路線としてほか2路線と競合しましたが、そのなかでも比較的利用者が多かった路線。航空路線や旧高速ツアーバスとの競合に加え、2011(平成23)年3月の九州新幹線延伸により、新大阪~鹿児島中央間の直通が始まったことで利用者が減少しました。

●トロピカル号
・運行事業者:近畿日本鉄道→近鉄バス
・区間:大阪・神戸~鹿児島
・運行終了:2016年9月

 運行開始当初は、いわさきグループ(鹿児島交通→南九州バスネットワーク)との共同運行でしたが、2006(平成18)年から近鉄バス単独となりました。前出「さつま号」と同様の理由で利用客が減少し、加えて乗務員不足も深刻化。この「トロピカル号」の運行終了により、大阪~鹿児島間を結ぶ夜行高速バスは全廃されました。

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福岡市内の車庫に帰って来た西日本鉄道「ムーンライト号」各停便(須田浩司撮影)。
長崎県交通局「ロマン長崎号」。同局は全国で唯一、夜行高速バスを運行する公営事業者でもあった(須田浩司撮影)。
西肥自動車「コーラルエクスプレス大阪線」。この路線の廃止により、西肥自動車は夜行高速バスの運行から撤退した(須田浩司撮影)。

●サザンクロス/コーラルエクスプレス
・運行事業者:南海電気鉄道→南海バス/西肥自動車
・区間:堺・なんば・神戸~佐世保
・運行終了:2013年9月

 関西3拠点と佐世保を結んでいましたが、関西地区からの航空路増設や旧高速ツアーバスの台頭などで利用客が減少し採算が悪化。この運行終了により、佐世保を拠点とする西肥自動車(西肥バス)は夜行高速バスの運行から完全に撤退しています。

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コメント

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1件のコメント

  1. 盆や正月、GWなどはLCCもかなり高額になるから、その期間だけは高速バスも需要が高くなるとは思うが、それより何よりも運転士の確保が困難だろう。一般の路線バス同様、運転士不足の問題はもう待ったなしな気がする。