海自新規導入の「哨戒艦」どんな船に? 定義あいまい各国様々、日本に必要なのは…
まさかの「三胴船」も? どうなる海自の新型「哨戒艦」
これまで述べてきたように、ひと口に「哨戒艦」と言っても、大きさや運用構想は国によって大きく異なります。海上自衛隊は防衛大綱と中期防の説明会で、導入予定の「哨戒艦」に関し、装備品などを搭載しない船体だけの基準排水量は1000トン級、乗員は30名程度になると説明しています。
他方、防衛省はアメリカとのあいだで、複数の船体を甲板で並行に繋いだ「多胴船」の共同研究を行っており、防衛省の外局で防衛装備品の研究開発を任務のひとつとする防衛装備庁は、3つの胴体を甲板で並行に繋いだ「将来三胴船コンセプト」を発表しています。
防衛装備庁の発表した「将来三胴船」のスペックは全長92m、全幅21m、満載排水量1500トンで、防衛省が上述の説明会で発表した「哨戒艦」の基準排水量1000トンという数字とのあいだに大きな開きはありません。そして、三胴船は横揺れが少なく、また甲板面積を大きくできるため、大型のヘリコプターを搭載できるといったメリットがありますが、まだ実用例が少ないため信頼性の面で不安があり、価格も単胴船に比べて高くなるというデメリットもあります。このため、新たに建造される哨戒艦は三胴船ではなく、護衛艦などと同様の単胴船になる可能性もあると考えられます。
「将来三胴船」の武装は76mm単装速射砲1門で、ノルウェーのクヌート・ラスムッセン級哨戒艦のように、必要に応じて各種モジュールを搭載することが想定されています。76mm単装速射砲は、イタリアのコマンダンテ級など、外国で運用されている多くの哨戒艦に搭載されています。また、あぶくま型護衛艦やはやぶさ型ミサイル艇にも搭載されているため、退役したそれらのものを流用できることから、どのような船型になるにせよ、新たに建造される哨戒艦の主武装が、76mm単装速射砲となる可能性は高いと考えられます。さらに、必要に応じて各種モジュールを搭載するというコンセプトも、近年の哨戒艦ではトレンドとなっていることから、海上自衛隊の哨戒艦もこのコンセプトを取り入れるのではないかと、筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思います。
「哨戒艦」は護衛艦に比べて地味な存在ですが、四方を海に囲まれた日本の安全を守る上では重要な艦となることは間違いなく、今後の推移が注目されます。
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