老舗路線を一新「本州第2位の長距離路線バス」誕生の背景 ローカル路線バスは変革期へ
路線バスの「生産性」どう向上 進む変革
しかしながら、長距離路線バスを取り巻く環境は、厳しさを増すばかりです。
三重交通「松阪熊野線」もそうですが、複数の市町村にまたがって運行する、いわゆる「地域間幹線系統」と呼ばれる路線バスの多くは、国や都道府県、自治体の補助を受けて運行しています。そうした地域間を結ぶ「幹線」として必要不可欠な路線も、近年は利用客の減少などで赤字額が増加しており、地方部を中心に、その維持すら困難になりつつあります。
バス事業を管轄する国土交通省も、関係自治体や団体、バス事業者に対して「生産性向上の取り組み」を求めるようになっており、2017年度以降は、都道府県協議会などで策定する生活交通確保維持改善計画において、そうした取り組みを検討し計画に盛り込み、運輸局より指導と助言を受けることになりました。
生産性や利便性の向上を目的とした路線再編も、全国各地で行われています。重複していた区間を見直して効率性を向上させた事例や、駅や病院、高校などといった公共施設を経由する(もしくは起終点に変更する)ことで利便性を向上させた事例など、形態はさまざま。「松阪熊野線」も、こうした流れのなかで誕生したのです。
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また、利用促進策の一環として、観光客向けの広域フリーパスを販売する動きも全国で広がっています。九州の「SUNQパス」や、北海道北部の日本海側沿岸を営業する沿岸バスの「萌えっ子フリーきっぷ」など、観光客向けの広域フリーパスは以前からありますが、近年特に増えているのが、外国人観光客を対象にしたパスです。団体ツアーからFIT(個人旅行)へシフトし、訪問先も多様化していることから、路線バスで旅をしてもらおうという意図が伺えます。
北海道の十勝バスが販売する「VISIT TOKACHI PASS」のように事業者単位のものから、中部地方の「昇龍道フリーバスきっぷ」、北海道の「Hokkaido Budget Bus Pass」など、より広域に、複数の事業者と連携して販売するものもあります。そうしたパスを利用する旅行者にとって、長距離路線バスが重宝なことはいうまでもありません。今後は日本人観光客向けの広域フリーパスの販売、充実も期待したいところです。
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