目黒の住宅街にある大屋根の正体 戦艦「大和」も実験か 旧海軍施設なぜいまも現役?

東京都目黒区に、戦艦「大和」建造に関わったかもしれない旧海軍の巨大な施設が現存、防衛装備庁がいまなお使用しています。建造されておよそ90年、現役であり続けるのにはもちろん理由があります。

なぜいまだ現役で使用されているの?

 太平洋戦争後は進駐してきたオーストラリア軍の駐屯地(キャンプエビス)になり、実験施設はしばらく使われませんでしたが、大切な水槽が破損しなかったのは幸いでした。1956(昭和31)年にキャンプエビスは日本へ返還され、防衛庁技術研究所目黒試験場となり、再整備されたのち実験を再開します。

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終戦から約10年後の大水槽棟。屋根が焼け落ちたまま(画像:防衛装備庁)。
オーストラリア軍から返還された直後の様子。水槽は無事(画像:防衛装備庁)。
オーストラリア軍から返還された直後、大水槽の西端より(画像:防衛装備庁)。

 コンピューターが無い時代、流体力学実験は模型を使って行うしかなく、この巨大施設は日本海軍だけでなく、日本の造船技術の発展にも大きく役立ちました。コンピューターシミュレーションが発達した現在でも、約90年間にわたり繰り返された実験で蓄積されたデータは代えがたいものであり、コンピューターシミュレーションで置き換えることは、完全にはできないといわれています。

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2019年現在の大水槽(画像:防衛装備庁)。

 最近は艦船だけでなく、無人水中航走体(UUV。無人で水中を動き回る小型のロボット潜水艇)や、陸上自衛隊向け水陸両用車の模型実験も行われています。1930(昭和5)年に作られた施設で未来のロボット潜水艇が実験されている様子は、技術の伝承と蓄積の大切さを伝えています。

【了】

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