軍事大国シンガポールの「軍」のあり方 なぜ面積・人口規模に見合わぬ重武装なのか?

実は陸空軍もかなり強力

 シンガポールは国土面積も小さく、日本(約37万8000平方キロメートル、外務省発表)の約530分の1にあたる、722.5平方キロメートル(シンガポール政府発表)しかありませんが、空軍と陸軍も強力な戦力を備えています。

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シンガポール海軍特殊部隊が運用する特殊作戦艇(竹内 修撮影)。
STエンジニアリングが発表した全通甲板を持つ強襲揚陸艦「エンデュアランス160」の模型(竹内 修撮影)。
シンガポール空軍の主力戦闘機F-15SG(竹内 修撮影)。

 現在のシンガポール空軍は、F-15の多用途戦闘機型「F-15SG」と、F-16C/Dの2種類の戦闘機を運用していますが、シンガポール政府は2019年3月に、F-16の後継機としてF-35戦闘機を導入する方針を明らかにしており、STOVL(短距離離陸・垂直着陸)型のF-35Bの導入も取りざたされています。

 シンガポール空軍はチャンギ(西)、チャンギ(東)、パヤ・レバー、センバワン、テンガーの、5か所の飛行場で航空機を運用していますが、敵からの専制攻撃で飛行場が使用不能になった場合は、高速道路を臨時の滑走路として使用する計画を立てており、そのための訓練も行なっています。

 日本がF-35Bを導入して、いずも型に同機を運用する能力を与えるための改修を行なう理由のひとつは、万が一、先制攻撃を受けて飛行場の使用が不可能になった場合でも、戦闘機による反撃能力を維持することにありますが、シンガポールにおいてもこれと同様に、F-35Bが運用可能な強襲揚陸艦を導入して、戦闘機による反撃能力を維持すべきとの意見があります。これを受けてか、シンガポールの総合防衛企業であるSTエンジニアリングは、F-35Bの運用も可能な全通甲板を持つ強襲揚陸艦のコンセプトを発表しています。

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STエンジニアリングが「バイオニクス」の後継として開発を進めている新型歩兵戦闘車「NGAFV」(竹内 修撮影)。

 シンガポール陸軍は、ドイツから導入したレオパルト2戦車に、大幅な近代化改修を加えた「レオパルト2SG」戦車230両に加えて、国産の「バイオニクス」歩兵戦闘車440両、装輪装甲車「テレックス」800両を保有しており、質量共にヨーロッパ諸国を上回る装甲車戦力を備えています。

 シンガポールはイギリスの植民地であった1942(昭和17)年に、マレー半島から侵攻してきた旧日本陸軍に10日足らずで攻略されるという経験をしており、国土に不釣合いなほど強力な装甲車戦力を備えている理由のひとつは、その苦い教訓によるものと考えられます。

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コメント

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1件のコメント

  1. この記事読むまでシンガポールの軍隊なんて存在すら気にしたことなかったが、
    非常に勉強になった
    こういう奥深い記事もっと増やして欲しい!