旧陸軍「九五式軽戦車」が3たび日本人の手へ戻るまで 当事者に聞くその紆余曲折と今後

日本への里帰りプロジェクト、始動

 創る会は、2016年にクラウドファンディングを活用して「くろがね四起」(旧日本陸軍 九五式小型乗用車の愛称。日本初の国産実用四輪駆動車)のレストアを完成させていますが、創る会と九五式軽戦車のイギリス人オーナーとは、この時の情報交換で交流がありました。イギリス人オーナーは、「くろがね四起」をレストアした実績を持つ創る会なら、歴史的遺産を保存していく能力も組織力も持ち合わせていると判断し、「日本の戦車は日本人の手に戻るのが一番良い」との思いから、真っ先に打診してきてくれたそうです。この九五式軽戦車は貴重な個体として、世界中のファンからも注目されており、中東の石油王とロシアの富豪も食指を動かしていたといわれています。

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ポナペ島に返還された九五式軽戦車の、その後。雨ざらしのため劣化が進む(画像:NPO法人 防衛技術博物館を創る会)。

 こうして、「九五式軽戦車里帰りプロジェクト」が始まりました。創る会はこの打診に何とか応えようと、日本で有志による寄付を募り、その資金でポーランドでの修復作業は継続されます。さらに当時の日本語資料の解読、解説などの支援も行い、2019年3月には、当時の純正エンジン「三菱A六一二〇VDe空冷直列6気筒エンジン」で走行可能なところまで修復が実現しました。オリジナルエンジンで走行できる九五式軽戦車は2019年5月現在、世界で2台のみです。

 提示された買取り価格70万ポンドを日本円にすると、約1億円となります。びっくりするような額ですが、創る会は、「くろがね四起」のレストアには2000万円以上掛かっていること、個体の貴重さ、15年という修復期間を考えると、この金額は妥当な額と判断しているそうです。

 創る会は資金調達に動きます。有志から個別に寄付を募るほか、目標金額5000万円と設定したクラウドファンディングを実施しました。後者は2019年1月30日から4月30日までの90日間の実施期間で、支援総額5999万5000円が寄せられ、支援者数は2052名に上り、成功裏に終了しました。クラウドファンディングの舞台を用意したREADYFOR社(東京都文京区)によると、この支援者数は同社が手掛けてきた案件のなかでは最多、支援総額も2番目だったといいます。これに、昨年集まった寄付金2000万円と自己資金、借入金を加算してイギリス人オーナーと売買契約が締結され、日本人に所有権が移ります。

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コメント

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1件のコメント

  1. どうせ疾風のようにスクラップになるか零戦のように売却する羽目になるかのどちらかだろうから、買い戻さない方が無難では?