旧陸軍「九五式軽戦車」が3たび日本人の手へ戻るまで 当事者に聞くその紆余曲折と今後
海外コレクターの手元にある旧日本陸軍の九五式軽戦車を購入するためのクラウドファンディングが成功しました。元は京都や和歌山で展示されていた車両です。今回買い戻すことになった経緯と今後の展開を、プロジェクト主導者に聞きました。
資金調達、成功!
2019年4月26日、インターネットの片隅で、1件のクラウドファンディングが成立しました。海外に現存する旧日本陸軍「九五式軽戦車」の購入資金を調達するために開始されたもので、最終的には目標を大きく超える金額が集まったそうです。
実はこの車両、2004(平成16)年までは日本国内にあったものです。よって今回は海外からの買い戻しということになるのですが、ここに至るまでは実に紆余曲折な経歴を辿ってきました。
「修復中の九五式軽戦車を70万ポンドで日本へ買い戻さないか?」
NPO法人「防衛技術博物館を創る会」(以下「創る会」)代表理事の小林雅彦氏は、イギリス人オーナーから最初にこの打診を受けた時の驚きと、70万ポンドを日本円に換算した際の絶望感をいまも忘れないといいます。
この九五式軽戦車は紆余曲折の経歴を辿りました。太平洋戦争中にミクロネシア連邦ポナペ島へ送られるも、戦闘を経験することなく終戦を迎え、そして36年のちの1981(昭和56)年5月に、2台が日本へ戻ってきます。うち1台は修理再塗装後、ポナペ島に戻されて現地に保存されていますが、2019年現在、劣化が進んだ状態です。
もう1台は当初、京都の嵐山美術館に寄贈されました。同館の閉館後に和歌山県南紀白浜の展示施設へ引き取られたものの、やがて同施設も閉鎖となり、日本人の引き取り手がないまま2004年にイギリス人の手へ渡り、再度日本を離れます。
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その後ポーランドの工房で、10年以上掛けて修復作業が行われていましたが、イギリス人オーナーはほかにも修復車輌を抱えており、資金面などから作業を断念して手放すことを考えていたといい、九五式軽戦車はさらに放浪することになりそうでした。
どうせ疾風のようにスクラップになるか零戦のように売却する羽目になるかのどちらかだろうから、買い戻さない方が無難では?