台風の予想進路図? 北陸新幹線の敦賀~新大阪間、公表ルートが「大ざっぱ」な理由

「計画を評価」から「計画に反映させる」へ

 しかし、環境アセスの調査を行った結果、建設予定地に希少生物がいることが分かったり、沿線にある住宅地の騒音や振動が想定以上に悪化することが判明したりしても、建設計画を取りまとめたあとでは、計画を大きく変えるのが難しいといった課題がありました。これでは、環境アセスを行う意義が薄れてしまいます。

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北陸新幹線の終点となる新大阪駅。大阪市内は基本的に地下トンネルで建設される(2017年2月、草町義和撮影)。

 そこで、「この都市と都市を結ぶ鉄道を建設しよう」という「大ざっぱ」なルートを決めたのち、環境への影響をあらかじめ調査。その結果を建設計画に反映させ、環境に配慮した詳細なルートを決めることになりました。

 この考え方に基づく手続きが、「計画段階環境配慮書」という文書の作成と公表です。この文書では、環境アセスを行う複数のルート案と駅位置案を示したうえで、ルートや駅位置を選ぶ際に配慮しなければならない項目(騒音や振動、地下水脈の位置、文化財、動植物など)と、各項目の予測結果や評価結果などが記されます。

 北陸新幹線 敦賀~新大阪間の計画段階環境配慮書の場合、複数のルート案と駅位置案を最大10km程度の「幅を持ったルート帯」(鉄道・運輸機構)として示しました。そのため、台風の予想進路図のようなルート図になったわけです。

 日本では2011(平成23)年4月、配慮書の作成手続きを採り入れた環境影響評価法の改正法が公布。2013(平成25)年から2014(平成26)年にかけて施行されました。

 ちなみに、JR東海は2011(平成23)年8月、リニア中央新幹線 東京(品川)~名古屋間の配慮書を作成。改正法の施行前でしたが、法改正の趣旨に準じて配慮書を作成し、幅5km程度の「大ざっぱ」なルートを示しました。その後、詳細なルートを選定し、2014(平成26)年に工事実施計画が認可されています。

 今後も、鉄道新線のような大規模プロジェクトが動き出すたびに「台風の予想進路図」を見ることになるかもしれません。

【了】

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コメント

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1件のコメント

  1. 若狭湾辺りから京都経由か~
    自動車でもチト険しいコースだからな
    先日は車で青森から日本海側を通じて下関まで走ってみたが、途中の敦賀辺りから大阪に抜けるコースも想定内に琵琶湖を挟んで湖東を抜けるか湖西を抜けるか考えたが新幹線は難関が多そうだな
    また大阪周辺の乗り入れで会社同士の決め事も進行しているのかな?
    これが実現するとサンダーバードも通勤特急専用車となってしまうのかな?