車窓に日本海の絶景 トンネル群が物語る難所の歴史 路線バスで旅する新潟・山形県境付近
わざわざ歩いてみたい「県境」
バスから笹川流れの車窓を楽しむとすれば、夕陽が沈む時間帯がよいのですが、この区間を走る1日2往復(平日のみ運行)の新潟交通観光の路線バスは、残念ながらその時間に運行していません。笹川流れ名物の赤く大きい夕日を眺めるのであれば、列車を利用するのがよいでしょう。
とはいえ、バスの車窓の見どころはほかにもあります。剥き出しの崖が連なる山側には、江戸時代に住民たちの手によって掘削された「大正浦隧道」などの廃トンネル、廃道が見えます。先人の苦労を思い起こしながら眺めてみるのもよいかもしれません。
また、少し離れた山形県側のあつみ温泉駅(山形県鶴岡市)近辺では、状態の良い未使用のトンネルも山側に見えます。これも、国鉄時代に羽越本線の複線化を目的として建設されたトンネルです。国鉄の財政難から1983(昭和58)年に工事が中断され、現在に至ります。
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新潟県の村上駅から山形県の鼠ヶ関駅、さらにその北のあつみ温泉駅までのあいだは、新潟交通観光と庄内交通が運行する計4路線のバスを乗り継いで移動できましたが、2019年3月、そのうち1路線が廃止されました。新潟交通観光が運行していた、府屋(ふや)駅前から県境部にあたる伊呉野(いぐれの)までの路線です。
もともと4本の路線バスはつながっておらず、バスが走っていなかった区間もあったのですが、2008(平成20)年の市町村合併で村上市域となった山北町(さんぽくまち。笹川、府府屋を中心とする、かつての新潟県最北端の町)では、町内を通る羽越本線の駅間が長く、大きな病院や商業施設が駅から離れており、そのあいだをつなぐ交通機関が求められていました。このため、村上市が新潟交通観光に補助金を出す形で2013(平成25)年に路線バスを延伸させたものの、府屋駅前~伊呉野間は利用者が極めて少なく、予約に応じて運行する乗合タクシーに置き換えられました。
乗合タクシーは路線バスと接続していないため、府屋~鼠ヶ関間は羽越本線を利用するのがよさそうですが、鼠ヶ関駅で降り、300mほど歩いて伊呉野集落に立ち寄ってみるのもいいでしょう。「伊呉野」は新潟県側の地名で、庄内交通の伊呉野バス停は山形県側にあるのですが、そこから県境をまたぎ100mほど離れた新潟県側に新潟交通観光の伊呉野バス停がありました。両県を隔てるのは舗装もされていない小さな路地で、民家のプロパンガスや家庭用エアコンの室外機などが並んでいるなど、ある意味「日本一さりげない県境」といえるかもしれません。
【了】
※一部修正しました(8月11日8時50分)
Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)
香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。
ギアいじったっけ
ロー入っちゃって
そしたらもうウィリーさ