奈良~関空直結の「リニア支線」現実性は? 奈良県が検討、その背景

ポイントは「法律」と「常電導」

 このリニア支線計画に現実性はあるのでしょうか。奈良市から大和高田市、御所市、五條市、和歌山県橋本市を経由して関西空港に至るルートは、直線的につないでも約80kmの距離があります。これを20分で走破するには表定速度240km/h、30分でも180km/hが必要で、最高速度が200km/hを超えることは確実ですから、全国新幹線鉄道整備法の規定に基づき「新幹線鉄道」に分類されます。しかし、基本計画に定めのない新線の位置付けになるため、まずは法律の壁が立ちはだかりそうです。

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常電導方式のリニアモーターカーで「HSST」を採用した愛知高速交通東部丘陵線「リニモ」(2005年6月、草町義和撮影)。

 次のポイントはリニア中央新幹線の超電導リニアとは異なる「常電導リニア」としている点です。一般的に常電導リニアといえば、ドイツが開発して、中国で実用化されている「トランスラピッド」を指すことがほとんどですが、超電導電磁石を使用していないことを示す以上の意味はなく、厳密な定義は存在しません。日本でも名古屋鉄道の主導で「HSST」という常電導リニアの開発が進められ、愛知高速交通東部丘陵線「リニモ」として開業しています。

 HSSTは原理上300km/hの高速運転が可能ですが、そのためには本格的な技術開発や走行試験が必要です。また、JR東海は超電導リニアを採用する理由として、磁力が強く浮上量を大きく確保できるため、地震に強いことを挙げています。リニア中央新幹線の支線が常電導リニアでは、リニア中央新幹線計画そのものの整合性が問われかねません。

 現時点では、実現可能性は別として、政治的駆け引きとして浮上した構想のように思えます。具体的な検証をするのは、調査結果の発表を待つしかないようです。

【了】

【地図】奈良と関空を結ぶリニア支線の想定ルート

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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コメント

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1件のコメント

  1. 城東貨物線を廃止した今、奈良から関空への合理的ルートが存在しない。これが残っていれば関西本線久宝寺から阪和線杉本町へ抜ける短絡路でそのまま関空へ抜けられるのだが、、、

    まさか、木津から片町線へ入り、放出から東西線を北上、新大阪を経由して大阪駅を通過しない『はるか』の運転ルートで関空へなどと言うルートを取るのでないだろうね?