まるでハリネズミ! 発見された旧海軍重巡「摩耶」が主砲を下ろしてまで目指したもの

旧日本海軍の重巡洋艦「摩耶」といえば、まるでハリネズミのように装備された対空火器で知られます。とはいえその姿は、竣工当初に期待された役割とは大きく異なるものでした。時勢に翻弄された「摩耶」の航跡を追います。

ところが敵は水面下からやってきた

 防空巡洋艦となった「摩耶」は1944(昭和19)年6月19日、「あ号作戦(マリアナ沖海戦)」に参加します。日本空母9隻、アメリカ空母15隻が交戦した大海戦でした。防空巡洋艦1隻がここに加わったことにより、艦隊における対空戦闘への貢献はどれほどだったのか検証することはできません。それでも「摩耶」自身が至近弾のみで直撃弾を受けなかったのは、強力な対空砲火で敵機を寄せ付けなかったからかも知れません。しかし「あ号作戦」は大失敗に終わります。

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防空に特化した改装がなされた「摩耶」、第3砲塔が撤去されているのが分かる。写真は1944年5月にフィリピンで撮影されたもの(画像:アメリカ海軍)。

 続いて10月20日から始まった「レイテ沖海戦」にも参加しますが、日本の空母戦力は完全に劣勢で、日本艦隊は激しい空襲にさらされることが予想されました。幸か不幸か、防空巡洋艦としての役割を果たす機会到来と思いきや、同23日にアメリカ潜水艦「デイス」から雷撃を受けます。午前6時57分、左舷に魚雷4発が命中し、あえなく同7時5分には沈没してしまいます。兵器の関係はじゃんけんのグーチョキパーの関係にも似ています。たくさんの対空火器も潜水艦には無力でした。

「摩耶」沈没により、艦長以下336名が戦死しましたが、生き残った乗員769名は戦艦「武蔵」に収容されます。「不沈艦」に収容された安心感も束の間、「武蔵」は翌24日に集中的な空襲を受けました。「摩耶」乗員も対空戦闘に参加しますが、結局「武蔵」も沈没してしまいます。ここで助かった乗員は駆逐艦「島風」に収容され、25日も対空戦闘配置に付きます。収容された艦でも対空戦闘配置についた「摩耶」乗員は、自分たちの防空巡洋艦がここに居ればと悔しい思いをしていたに違いありません。

 26日に「島風」はフィリピンのコロン島に戻りますが、「摩耶」の乗員でここまで生き残ったのは299名でした。アニメ映画『火垂るの墓』の主人公、横川清太の父は「摩耶」に乗艦しており、手紙を出しても返事がなく、戦後になって「摩耶」が沈没していることが分かり戦死が示唆されるのですが、ひょっとしたら艦を乗り移りながら生存していたかもしれません。

 防空巡洋艦として本来の働きができなかった「摩耶」でしたが、2018(平成30)年、その名を継ぐ3代目「まや」が海上自衛隊のイージス艦として進水し、2020(令和2)年3月から弾道ミサイル防衛の一端を担う予定です。とはいえ令和時代の「まや」には、防空巡洋艦として実戦を働いてもらいたくはないものです。

【了】

※一部修正しました(2019年12月10日12時)

【画像】旧日本海軍が考えていた「漸減作戦」のイメージ

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

7件のコメント

  1. こういうハリモグラ型ゾイドいたな

  2. 文中「漸減(ざんげん)作戦」とありますが、「ぜんげん」が正しい読みだと思います。

  3. これはうちのじいさんが乗ってた船ですね。もともと軍艦ではなく商船を改造した船で主砲を撃つと壁が曲がるって言ってました。軍艦は小さい部屋で区切られていて左側に魚雷を受けて浸水すると右側も浸水させてバランスをとるとか、軍艦が沈没するとき渦ができるから速やかに待避することなど聞きました。マーシャル諸島から揚子江まで船で巡ったみたいですがどうやって生きて帰ったのだろう。恐らく椰子の木で碁石の入れ物を作ったとか話しても戦争の悲惨は教えてくれないでしょうね

  4. それは摩耶じゃない、摩耶山丸だ。

  5. 摩耶って名前がカッコいいよね。

    愛宕高雄の締まらない感じ(失礼)に比べて、摩耶・鳥海て

    センス良すぎか

  6. この軍艦には、祖父の実弟(大叔父)が機関兵として乗り組んでいて、まさにこのレイテ沖海戦で、アメリカ潜水艦・デイスに雷撃されて艦と運命を共にしましたから、、、、かって憲兵だった祖父は、私が幼いころ、三重県の大王崎というところに連れて行ってくれて、太平洋を一望できる灯台の建っていた丘の上から、「あれが太平洋だよ」と指さしながら、目に涙を浮かべて大海原を眺めていた情景が今も忘れられません。

  7. 一番好きな巡洋艦です。高雄型の中でも少し仕様が違ってた。

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