歴代戦車の「スピードキング」は? 速さのためなら防御も捨てた! 戦車すらやめた!
「ギネス世界記録」に認定された世界最速戦車
「スコーピオン」軽戦車も、俊足を手に入れるために高出力エンジンを求め、「クリスティー」戦車やM18「ヘルキャット」駆逐戦車が航空機用エンジンを搭載したのに対し、「スコーピオン」軽戦車は高級車ブランドとして当時も名を馳せていたジャガーの直列6気筒ガソリンエンジンを載せました。
これも速さにひと役買ったかもしれませんが、ガソリンエンジンは燃費や引火性に課題があったため、その後アメリカ製のディーゼルエンジンに載せ替えられています。
また当初は火力支援や対戦車戦闘を考慮して76mm砲を搭載したのですが、即応性や連射性が劣っていたため、一部の車両は後に30mm機関砲に換装され、「セイバー」偵察装甲車に名称を改めました。いうなれば、足にも砲にも速さを求めた結果、「戦車」をやめてしまったわけです。
「スコーピオン」軽戦車は1994(平成6)年、「セイバー」偵察装甲車も2004(平成16)年に退役していますが、兄弟車で同様に80km/hを発揮する「シミター」偵察装甲車は現役なので、「スコーピオン」軽戦車の血統は残っているともいえるでしょう。
なお、2002(平成14)年1月26日には民間人が「スコーピオン」軽戦車で82.23km/hを記録し、世界最速戦車としてギネス登録されています。ただし、この記録は速度を出すために、砲弾や無線機などを外して軽量化したうえで達成したものでした。
ちなみに履帯式ではない、装輪式(車輪式)の16式機動戦闘車ならば100km/h以上出るため、スピードを求めるなら、結局、履帯より車輪の方が最適なのは自明の理です。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
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