歴代戦車の「スピードキング」は? 速さのためなら防御も捨てた! 戦車すらやめた!

「ギネス世界記録」に認定された世界最速戦車

「スコーピオン」軽戦車も、俊足を手に入れるために高出力エンジンを求め、「クリスティー」戦車やM18「ヘルキャット」駆逐戦車が航空機用エンジンを搭載したのに対し、「スコーピオン」軽戦車は高級車ブランドとして当時も名を馳せていたジャガーの直列6気筒ガソリンエンジンを載せました。

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ギネス公認の世界最速戦車であるイギリスの「スコーピオン」軽戦車(2017年6月、柘植優介撮影)。

 これも速さにひと役買ったかもしれませんが、ガソリンエンジンは燃費や引火性に課題があったため、その後アメリカ製のディーゼルエンジンに載せ替えられています。

 また当初は火力支援や対戦車戦闘を考慮して76mm砲を搭載したのですが、即応性や連射性が劣っていたため、一部の車両は後に30mm機関砲に換装され、「セイバー」偵察装甲車に名称を改めました。いうなれば、足にも砲にも速さを求めた結果、「戦車」をやめてしまったわけです。

「スコーピオン」軽戦車は1994(平成6)年、「セイバー」偵察装甲車も2004(平成16)年に退役していますが、兄弟車で同様に80km/hを発揮する「シミター」偵察装甲車は現役なので、「スコーピオン」軽戦車の血統は残っているともいえるでしょう。

 なお、2002(平成14)年1月26日には民間人が「スコーピオン」軽戦車で82.23km/hを記録し、世界最速戦車としてギネス登録されています。ただし、この記録は速度を出すために、砲弾や無線機などを外して軽量化したうえで達成したものでした。

 ちなみに履帯式ではない、装輪式(車輪式)の16式機動戦闘車ならば100km/h以上出るため、スピードを求めるなら、結局、履帯より車輪の方が最適なのは自明の理です。

【了】

【写真】世界最速戦車の心臓、ジャガー社製の直列6気筒ガソリンエンジン

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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