443km/hで走った最速の新幹線955形「300X」現代に受け継がれる7年の生涯で残したもの

貴重なデータを残し7年で引退

 もちろんこの速度記録が出たからと言って、次のダイヤ改正から東海道新幹線が400km/h走行になるわけではありません。300Xが達成した443km/hを出せるシステムをベースに、環境性能、空力性能、旅客サービスなどにリソースを割り振り、経済的で快適、高速走行可能な技術が研究されました。443km/hというポテンシャルを持ちながら、たとえば少しずつ速度を落とし、その分で騒音を抑えるなど、快適性や環境性能を向上できます。

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東海道・山陽新幹線を走るN700系新幹線電車。車体傾斜装置は「300X」の構造を受け継いでいる(2011年11月、恵 知仁撮影)。

 300Xは予定された試験をこなし、2002(平成14)年に廃車となりました。7年間一人として有償旅客を乗せることはありませんでしたが、300Xが生み出した膨大なデータのなかから、たとえばダブルスキン構造、シングルアームパンタグラフなどは700系新幹線電車以降の車体に、車体傾斜装置はN700系新幹線電車に、それぞれ引き継がれました。それ以外にも多くの要素が次世代新幹線の構造に活かされています。

 300Xがひらいた新技術は、現代の新幹線電車の礎となったのです。

【了】

前後で顔が違う「300X」反対側の写真

Writer: 児山 計(鉄道ライター)

出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。

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