艦艇に迫るミサイルどう回避?撃墜できなかったら…進む「デコイ(おとり)」開発配備

IHIエアロスペースが出展した浮遊式デコイ

 そうした各国の動向も踏まえ、日本企業もデコイの開発に乗り出しています。

 2019年11月18日(月)から20日(水)にかけて、千葉県の幕張メッセで開催された日本初の総合防衛装備品展示会「DSEI Japan」において、日本のIHIエアロスペースが展示したのが、空中浮遊式デコイ「トレロ(TORERO)」です。

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空中に浮遊する「トレロ」のイメージ(画像:IHIエアロスペース)。

 このトレロについて、IHIの担当者はその性能を次のように説明します。

「トレロは、電波を反射する物体をパラシュートのように空中に浮遊させる仕組みのデコイで、チャフの後継という立ち位置です。現代の対艦ミサイルは、チャフと目標艦との識別が可能になってきています。しかし、このトレロはチャフを用いた際よりもレーダー上には大きな物体として現れるため、レーダーを用いる全ての対艦ミサイルに対して素早く有効に妨害を行うことができます」

 さらに、アメリカ軍が運用するヌルカについて、「システムが複雑なぶん、高価であるという問題があります」とし、その点、トレロは非常に安価で、かつ優れた性能を有しているうえ、「既存の護衛艦が装備するチャフ発射器から運用することができます」といいます。

 現在、軍事力を拡大する中国が特に力を入れている分野のひとつが、各種対艦ミサイルです。海上自衛隊の艦艇にも、そろそろこうしたデコイの配備を検討する必要があるのではないでしょうか。

【了】

【写真】高価な「おとり」アクティブデコイ「ヌルカ」の射出

Writer: 稲葉義泰(軍事ライター)

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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コメント

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1件のコメント

  1. 対艦弾道弾、ツィルコン、極超音速滑空体、ステルスミサイルの登場でハードキルに限界が来ている事が新型デコイの開発を促しているのでしょうか(?_?)
    アクティブ式デコイでは敵電波が強力・複雑な場合や複数のミサイルを妨害しなければならない時、量子レーダー対策に不安があります(ToT)が
    照射された電波を反射するならそれらも安心できます(^∇^)