700系が残したもの 東海道新幹線から引退も受け継がれる「700」と「進化の基礎」とは
その前の300系も大きな転換点 でも700系が「進化の基礎」な理由
700系の前、1992(平成4)年にデビューし、50km/hもスピードアップ(270km/h運転を実現)した初代「のぞみ」の300系も、それ以前の0系や100系からメカ的に大きく変わっており、その意味では、いまに続く大きな転換点です。ただ、そこで特に大きかった車両開発の目標は「軽量化」と「高速化」でした。
対し700系の開発コンセプトは「快適な車内空間の提供」「環境への適合」「車両性能の向上」「メンテナンスを含めたトータルコスト」といった、その後のN700系とN700Sに通じるものです。
客室の照明も、300系は落ち着いた間接照明だったものの、700系以降は直接照明の「明るい車内」に変わっています。
また、車両床下に搭載した機器を整備するにあたって、300系までは床下に潜る形だったのが、700系からは横のふさぎ板を開けて行う“楽な形”に変更。機器のテストも300系では外から試験器を使っていたのが、700系からは運転台から試験モードで実施可能になりました。
「N700Sまでいろいろ進化していますが、その『進化の基礎』は700系で完成したと思います」(JR東海 小暮鉄也助役)
東海道新幹線の車両は300系でブレークスルーし、700系でそれが、利用者にとっても運用する側にとっても“ひとつの完成形”になって、最新のN700Sまでそれを元に進化が続いている、というところでしょうか。
東海道新幹線から、ちょっと寂しい形での引退になってしまった700系ですが、2020年7月のN700Sデビューは、いわば「新しい700系のデビュー」でもあるのです。その「700」が表すとおり――。
※700系は「東海道新幹線からの引退」で、今後も8両の「ひかりレールスター」編成などが山陽新幹線を走行。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
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