空母着艦が「制御された墜落」といわれるワケ わずか2秒で0km/hに 着艦時の衝撃は?
第2次世界大戦前から使われる歴史ある急停止方法
着艦コースが問題なければ、飛行甲板に艦載機が降りてきますが、わずか100mほどの距離で停止しなければなりません。そこで用いられるのが飛行甲板に張られたアレスティング・ワイヤーです。このワイヤーに艦載機が備える着艦フックを引っ掛けるという、第2次世界大戦前からある意外と強引な方法で急停止させています。
ただし、あまりにも張度(テンション)が強すぎると艦載機やパイロットへの負担が大きくなるほか、ワイヤーが切れやすくなってしまうため、機種によってセッティングを変えています。
アレスティング・ワイヤーは、アメリカ海軍の空母の場合、3本もしくは4本あり、おおむね2本目か3本目に着艦フックが引っ掛かるように艦載機は降ります。万一、艦載機がアレスティング・ワイヤーを捉えられなかった場合は、通常であればそのまま加速して再発艦し、着艦をやり直します。
しかし、このような手段が取れない場合、たとえば着艦フックが故障していたようなときは、甲板上に「エマージェンシー・バリケード・ネット」を立て、そこに止まれなかった艦載機が飛び込む形で停止します。このバリケード・ネットが空母着艦における最終手段といえます。
空母への着艦は「制御された墜落」とも呼ばれ、前述したようにわずか100mほどの距離で急停止するため、艦載機には陸上機よりもはるかに大きな耐衝撃性能が求められます。
一説によると、陸上機に比べて約6倍もの衝撃に対する強度が求められるそうで、さらに揺れ動く飛行甲板に降りるため、主脚は「アシンメトリカル・ランディング」と呼ばれる片側だけでの着艦も可能な強度が必要とのことです。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
コメント