英本土へ戦車を空輸せよ 独の巨大グライダー「ギガント」 作ったはいいがどう飛ばす?
張りぼて巨大グライダーに余り物のエンジンを付けてみたら…
使い勝手の悪いMe321に、エンジンを付けて輸送機に設計し直したのがMe323です。エンジンは、ドイツの工業リソースの負担にならない占領下フランス製の、ノーム・ローン14Rを使いますが、約1000馬力と非力だったため6発も装備しなければなりませんでした。合理的なのか手抜きなのかわからない、張りぼての巨大輸送機が出来上がります。一部はMe321から改造しましたが、ほとんどは新規生産機です。
車輪は荒地でも離着陸できるよう、前輪ボギーに4輪、後輪6輪の固定式とされ、後輪には空気式ブレーキが取り付けられて着陸後200mで停止できました。武装は自衛用に13mm機銃が装備され、損害が増えてくると増備されて20mm機関砲を主翼上に装備されるなどしますが、所詮は気休めでした。
積載量は資料によってばらつきはあるものの、15tから25tとされ、兵員、武器弾薬、火砲、馬、車輌、軽戦車、分解した戦闘機とあらゆるものを運びました。補給の途絶えがちだった北アフリカ戦線では、巨大な「ギガント」を見ると補給が受けられ、負傷兵は国に帰れると頼りにされていたようです。
運用が始まったのは1942(昭和17)年9月からですが、そのころすでに各方面でドイツの制空権は失われつつあり、鈍重だったため損害も多くなります。布張りで銃弾が突き抜けてしまうため、エンジンかコクピット、燃料タンクに命中しなければ落ちなかったとも言われましたが、そんな事例は稀でした。
1944(昭和19)年まで、エンジン付きのMe323「ギガント」は198機が生産されたものの、完全な機体は現存していません。2012(平成24)年にイタリアのサルデーニャ島北海岸、ラマッダレーナの海岸から約15km、水深約60mに残骸が見つかりました。特徴的な6個のエンジンはそのまま並んでいたそうです。1943(昭和18)年7月26日に、イギリスのブリストル「ボーファイター」戦闘機によって撃墜された機体と見られています。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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