速すぎるクルマにNO! ボルボ「スピード自主規制」の反骨 ドイツ車至上主義を変えるか
伸びてきた高級志向 それに背くボルボの反骨
近年のボルボ車は、かつての「丈夫さ一辺倒」という武骨な実用車ではなく、スマートでスタイリッシュなプレミアムカーに変化しました。トップモデルとなる「XC90」などは、ジャーマンプレミアと遜色ない価格帯です。そういう意味で、今回のボルボの決断は思い切ったものに見えます。「一部の顧客を失ってもいい」という、その顧客は、そうしたドイツ車的価値観を持つユーザーを指し示すからです。
しかし、こうしたボルボの姿勢を肯定するユーザーも、当然のことながら存在します。問題は、それがどの程度の数かということでしょう。もしも、従来のボルボのユーザー以上にそうした層がいれば、ドイツ車的価値観に押しまくられつつあった日欧米のブランドは、勇気づけられることでしょう。
つまり、超高速走行性能だけでない、別の価値観でプレミアムカーの拡販が期待できるのです。また、そうした超高速走行性能以外の部分は、レクサスやインフィニティなど、日系のプレミアム・ブランドが得意とするところです。
まずは、ボルボの提案を市場がどのように受け止めるのか、販売台数がそれを示すはずです。新型コロナ禍のあと、ボルボの販売展開が注目されます。
【了】
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。
星新一だったか、あまりに車内が快適なので(移動時間を長くするために)誰もが速度を出さなくなる自動車、という作品を書いていたかな?