速すぎるクルマにNO! ボルボ「スピード自主規制」の反骨 ドイツ車至上主義を変えるか
ボルボが、今後すべての新車で最高速度を180km/hに制限します。速度無制限で走れるドイツのアウトバーンに「NO」を突き付けるともいえるこの施策、クルマの価値観を大きく変える可能性があります。
180km/h以下の自主規制は「アウトバーンの否定」
2020年5月20日(水)、ボルボ・カーズは「ボルボ全車に180km/hの最高速度制限とケア・キーを採用する」と発表しました。同社は2019年3月、「スピードの出し過ぎによる危険性を喚起するため、全車に180km/hまでの速度制限を導入」と予告しており、今回の発表は、それを文字通りに有言実行するという宣言です。 また「ケア・キー」というのは、ユーザーが自由に最高速度をさらに低く設定できる機能のことです。
この宣言と行動の背景には、ボルボの「Vision 2020」という目標があります。これは「2020年までに、ボルボ車に搭乗中の事故における死亡者または重症者ゼロ」を目指すもの。しかし、その実現は、クルマの技術を高めるだけでは難しく、ドライバーに起因する3つの課題を解決する必要があるとボルボは考えました。すなわち「スピードの出し過ぎ」「飲酒や薬物使用による酩酊」「注意力散漫」です。
つまりボルボは、交通事故による死亡者ゼロ実現のために、課題のひとつ「スピードの出し過ぎ」対策として180km/h制限を導入するわけです。2019年のリリースには、「速度を制限することで、すべてを解決できるわけではありませんが、たとえひとつの命でも救うことができれば、それは価値があると言えます」という、ボルボ・カーズ ホーカン・サムエルソン社長兼CEOのコメントがありました。
ただ、この動きに対して日本人としては、「だからどうしたの」と不思議に思う人も多いことでしょう。なんといっても日本の道は、制限速度が最高でも120km/hまでです。180km/hでも十分なスピードのように思えます。
星新一だったか、あまりに車内が快適なので(移動時間を長くするために)誰もが速度を出さなくなる自動車、という作品を書いていたかな?