夏に発生しやすい積乱雲 旅客機は元々の飛行ルートからどれくらい外れて避けるのか

夏に多く発生する「積乱雲」、突入してしまうと大きな揺れなどをともなうことから、パイロットはこれに注意しながらフライトします。どのように、またどのくらいの距離を避けるのか、ANAのパイロットに聞きました。

本来のルートからどれくらい避ける? 国による違いも

 ANAのパイロットによると、たとえば国内で大きな積乱雲を横方向に避ける場合、もちろん雲の大きさによるものの、計画したルートから50ノーティカルマイル(およそ93km)程度、避けることがあるそうです。この距離は、およそ羽田空港から富士山までの距離に相当します。

 そして海外では、この日本の例を大きく上回る例もあるそうです。

「アメリカ中西部では、日本ではありえないような巨大積乱雲も発生することがあります。私個人は、アメリカのヒューストン発、成田行き便に乗務したとき、コロラド州のデンバー付近で巨大積乱雲に遭遇し、これを避けるため、計画ルートから150ノーティカルマイル(約277.8km)ほど避けた経験もありました」(ANAのパイロット)

 なお、この150ノーティカルマイルという距離、羽田空港からの直線距離で、おおよそ中部空港、あるいは新潟空港くらいまでに相当します。また日本海側にある富山空港までは約260kmで、これをも上回ることになります。

【了】

【地図】積乱雲の回避距離 羽田空港から見ると…?

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コメント

1件のコメント

  1. アメリカで長いこと飛行機開発に携わっていたものです。

    本来の仕事は電気システムや航法関係のエレクトロニクスシステムの開発でした。

    しかし、飛行機で『電気』というと、『雷』や『静電気』も範疇でした。

    NASAや空軍、そういったところと付き合う専門家とも仕事をいっぱいさせてもらいました。

    その範疇の『雷』は、ほとんどの場合積乱雲が関与します。

    でも、積乱雲で一番怖いのが気流です。

    本来、積乱雲は地面が暖められてできる上昇気流が元で出来ます。

    そのときの上昇気流は地面付近の遠くから流れてくる空気です。

    しかし、陽が登って日射が強くなり、その気流の上昇が勢いづいてくると様相は一変します。

    地面を這うように遠くからくる空気では上昇気流の空気を賄いきれなくなります。

    足りないんです。

    それだけでなく、上昇して吹き上げられる空気も多くなり、上空でその空気がどこかに行ってくれなければならなくなります。

    そこで起きるのが、積乱雲のすぐ外側で、上空に上った空気が上空で冷やされ、下降気流となって地面に戻るという現象です。

    下降して地面近くに行くとまた温められて上昇する。

    つまり、積乱雲の周りでは、真ん中で上昇気流、外側で下降気流が生じます。

    下降気流では冷却は起きないので雲は生じません。

    つまり、積乱雲のすぐ外にある下降気流は飛行機からは見えないんです。

    下降気流は飛行機にとって乱気流と並ぶ危険な気流です。

    なにしろ下向き、つまり墜落させる方向に気流が流れるんですから。

    アメリカのコロラドのように、地面に草木が生えていないところではこの現象がとても強く起きます。

    だから、今日の記事にあったように、このエリアでは、飛行機は積乱雲からずっと離れて飛ぶんです。

    言い換えればそういった場所は竜巻も起きやすいです。

    その逆を言えば、竜巻に会いたくなければ、広い森の中の町に住みなさい、です。

    上昇気流が出来ませんから。

    私たちはそうして住むところを決めています。