横須賀の「第7艦隊」は世界最強? 洋上で戦わない艦隊も 米海軍ナンバー艦隊のトリビア

実弾を撃たない「第10艦隊」は目に見えないエリアを担当

 また、第7艦隊同様にアメリカ海軍唯一といえる特徴を持つのが、第10艦隊です。冒頭に述べたように2020年7月現在、アメリカ海軍には7つの艦隊があります。しかし、第1から第7までの連番ではなく、第1が欠番で、第2、第3、第4、第5、第6、第7、そして飛んで第10の各ナンバー艦隊で計7つとなっています。

 最後の第10艦隊は、ほかの艦隊と決定的に異なる点があります。それは担当エリアがサイバー空間であり、将兵が乗り込む軍艦は1隻もないという点です。

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2010年1月、第10艦隊の発足式典の様子。艦隊司令官は海軍中将が務める(画像:アメリカ海軍)。

 そもそも第10艦隊は、第2次世界大戦中の1943(昭和18)年に、対潜水艦戦術を研究するための部隊として新編されました。指揮下に実戦部隊を持たなかったことから、第2次世界大戦終結直前の1945(昭和20)年6月に廃止されますが、半世紀以上経った2010(平成22)年1月に、今度はサイバー戦を指揮するために再編成されたのです。

 地球上に広がる実在する海ではなく、いわば「ネットの海」で戦うための艦隊というのは、他国の海軍を見渡してみても極めて異例といえるでしょう。

 海上自衛隊にも、サイバー空間に対処するための「保全監査隊」という部隊があります。しかし、規模が異なるうえ、海上自衛隊の保全監査隊は部外からの攻撃に対処する防護、いわゆるセキュリティが主任務なのに対して、アメリカ海軍の第10艦隊は敵の通信ネットワークに対して電子戦攻撃を仕掛けることも任務に入っています。

 当然、人員や予算規模も大きく異なっており、これをフリート(艦隊)として空母や強襲揚陸艦などを指揮する第2から第7までの各艦隊と同列に扱うという点で、アメリカ海軍のサイバー戦に対する本気度が感じられるといえるでしょう。

【了】

【写真】東京にも来るアメリカ第7艦隊旗艦

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

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2件のコメント

  1. 弾道が必ずしも放物線を描かない中距離誘導ミサイルの出現を前にして通常兵器のとるべき道は?

  2. 第一艦隊は沿岸警備隊じゃなかったかしら?