日本も参加すべき? 英主導の次期ステルス戦闘機「テンペスト」プロジェクト 動く
日本の戦闘機開発と親和性の高いイギリスのFCAS
日本は現在の中期防衛力整備計画(中期防)において、日本主導でF-2戦闘機の後継となる「次期戦闘機」を開発する方針を定めています。しかし一方で、「国際協力も視野に」としており、河野防衛大臣は2020年3月27日の記者会見で、共同開発のパートナー国としてアメリカとイギリスを挙げ、2020年末を目途にパートナーを絞り込むと述べています。
現時点で発表されている次期戦闘機と、FCASの中核となる「テンペスト」戦闘機のコンセプトは必ずしも一致しておらず、イギリスとの共同開発は難しいと見る向きもありますが、実のところイギリスはFCASのパートナー国に、必ずしも「テンペスト」の開発に参画することを求めていません。
前述したように、スウェーデンはイギリスのFCASには協力しますが、「テンペスト」の開発参加については保留としており、協力で得た技術を自国空軍に配備が開始されたJAS 39「グリペンE」戦闘機の能力向上や、今後、独自に新戦闘機開発を行う場合に活用するという形で、イギリスと合意しています。
「テンペスト」は搭載する電子機器の能力向上や、レーザーなどの高エネルギー兵器の装備を見据えて、電力供給量の大きな小型エンジンを搭載する計画としています。それは、日本の次期戦闘機に搭載が計画されている「ハイパワー・スリム・エンジン」のコンセプトと一致しており、前述したFIAコネクトのセッション参加者も、日本と協力できる分野として、レーダーなどの電子装置とともにエンジンを挙げています。
実は防衛装備庁や航空自衛隊の中にも、独自性を保ちつつ開発費を抑えるため、イギリスのFCASと協力すべきという声が少なからずあります。日本とイギリスは安全保障分野での協力関係を急速に強化しており、たとえば新型空対空ミサイル「JNAAM(Joint-New-Air-to-Air-Missile)」などで、すでに共同研究が進みつつあります。
次期戦闘機のパートナー国に関しては、相互運用性を確保する観点から、アメリカが最有力候補であると見られていますが、次期戦闘機の開発にあたって独自性を重視するのであれば、イギリスという選択肢も真剣に検討すべきだと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は考えます。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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