北陸新幹線「敦賀開業」で高速バスどうなる? 競合環境の激変 過去にはプラスの影響も

さらに考えられる「攻めの施策」 新幹線「長崎開業」も転機に

 新幹線延伸は、「イチから新路線を引く」つもりになって、ダイヤ改正やパーク&ライドの環境整備を一気に進め、「攻め」の戦略に出るいい機会です。さらに名古屋~福井線は、新幹線と同年に延伸開業が見込まれる中部縦貫道(東海北陸道 白鳥ICから北陸道の福井北JCTを結ぶ)を経由させ、所要時間を短縮することも可能です。その場合、北陸道沿いで一定の乗降がある途中停留所(敦賀、武生、鯖江などのIC。いずれも福井県)を経由できなくなるので、増便のうえ、一部の便のみ経由を振り分ける積極策も選択肢でしょう。

 一方の京阪神~福井、金沢方面は、現在、在来線特急が相当な頻度で運行しています。所要時間も、高速道路が遠回りということもあり鉄道が優位で、高速バスのシェアは高くありません。新幹線延伸後の鉄道の運行形態がはっきりしない以上、先行しての投資はリスクが大きく、様子を見ながら対応することになるでしょう。

 同じような変化は、2022年度内に武雄温泉~長崎間の暫定開業が見込まれる九州新幹線長崎ルートでも予想されます。高速バスには、1台当たりの座席定員が少ないからこそ高頻度運行が可能なこと、地方側ではIC周辺などに大きなパーク&ライド駐車場を整備しやすいこと、逆に都市側では官庁街や繁華街に直接乗り入れしやすいことといった特徴があります。高速バス事業者が、その特徴と利用者のニーズに真摯に向かい合えば、新幹線延伸が意外にも高速バス路線の成長を後押しすることも考えられるのです。

【了】

【路線図】北陸新幹線だけじゃない! 同時期に延伸する「中部縦貫道」の影響

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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