英エンジン+独主翼=最強戦闘機MiG-15爆誕! 世界が震撼した「ミグショック」の顛末
MiG-15を倒せ! 続々開発された「後退翼機」
当然、MiG-15の高性能っぷりに各国は黙っているわけにもいかず、MiG-15のもうひとつの強さの理由「後退翼」を急いで適用しました。
「シーホーク」は「ハンター」となり、「アタッカー」は「スウィフト」へ、「ウーラガン」は「ミステールIV」へ、F9F「パンサー」はF9F-6「クーガー」へ発展し、これらの後退翼型はMiG-15やMiG-15の性能向上型MiG-17と同等の性能を得て大成功をおさめます。もっとも「スウィフト」だけは欠陥機とみなされましたが。
ロールスロイス「ニーン」の最初の試運転は第2次世界大戦中の1944(昭和19)年であるにも関わらず、2020年現在も航空用エンジンとして現役で使われているほどの傑作エンジンです。だからこそ1950年前後の当時は、世界中の戦闘機が競って搭載することになりましたが、よりにもよって「ニーン」を一番うまく使いこなしたのは敵国ソ連のMiG-15であり、西側の切り札が最強のラスボスを生み出してしまった事実は、実に興味深い点であるといえるでしょう。
ソ連においてMiG-15と同時期に開発され採用を争ったYak-23やLa-15などの競合戦闘機は、「ニーン」と同世代のロールスロイス「ダーウェント」を搭載していました。もしイギリスがエンジンをソ連に譲らなかったとしたら、MiG-15ショックはなかったか、少なくとも年単位で遅くなったに違いありません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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