都内で目撃多数の陸自16式機動戦闘車はなにをしていた? その「戦い方」に関係アリ

2020年8月のお盆シーズン、都内で陸上自衛隊の16式機動戦闘車に関し、一般道を走っている姿の目撃情報が相次ぎました。実はこれも訓練の一環であり、そしてそれこそが従来の戦車と異なる16式ならではの戦い方に関連しています。

デジタル化された「鉄馬の流鏑馬」

 第22即応機動連隊は8月中旬からこの2種類の「走り」を訓練しました。500kmの戦略機動後、東富士演習場畑岡射場で戦術機動、戦闘射撃訓練を行ったのです。

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弾薬交付所で105mm砲弾を開梱し各車に運び込む。弾頭部には保護用のカバーが付いている(2020年8月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 第22即応機動連隊の機動戦闘車隊は旧第6戦車大隊から改編された部隊で、16式の乗員の多くは74式戦車や90式戦車からの転換です。話を聞いたところ、戦法は16式と戦車とで全くの別物と言い切ります。

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重さ約20kgの砲弾を持ち上げて砲塔ハッチから一発ずつ収納していく。万一落としても爆発しないが、大けがはしかねない(2020年8月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 16式の乗員に徹底されている戦法をひと言でいうと「つねに位置を変えろ」だそうです。16式の装甲は戦車ほど厚くありません。そのぶん軽量で速く走れます。敵に見つからず、敵の弾に当たらないように走りまわって位置を変え続けるのが基本です。しかしキャタピラより走破性に劣りますので、戦車だったら行ける場所に16式は入っていけません。この地形の見極めも大切だそうです。

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高速走行しながらも、僚車からのデーターリンクで敵位置を把握し照準を定めている(2020年8月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 今回の射撃訓練などを実施した東富士演習場畑岡射場といえば、「富士総合火力演習(そうかえん)」の会場として知られます。第22即応機動連隊の16式が、そこを縦横に走りながら次々と現れる標的を射撃します。撃ったらすぐに移動する為、反斜面待ち伏せでは、発砲後ただちに離脱できるように後面を敵に向けて射撃するという、戦車ではありえない16式ならではの「一撃離脱戦法」も見られました。

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反斜面で後面を敵方に向けての待ち伏せ姿勢で射撃する(2020年8月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 74式戦車の場合は基本、停止して射撃します。90式戦車になって、等速で直線的に動きながら射撃が可能になり、10式になってスラローム走行で、しかも標的が動いていても命中弾を浴びせられるようになりました。90式から10式への技術的進歩は異次元レベルです。そして、16式も10式と同じ射撃照準システムを搭載しているといわれています。

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待ち伏せ射撃後、素早く「一撃離脱」出来るよう後進して反斜面射座に入ろうとする16式(2020年8月22日、月刊PANZER編集部撮影)。

 16式はあらゆる方向に対して、あらゆる姿勢で高速で走行しながら正確な射撃を繰り返しました。一見すると何でもないことのように思えますが、タイヤという軟体で接地している装甲車で74式戦車と同じ105mm砲の正確な射撃を行うというのは、大変な技術的進歩なのです。馬に乗って疾走しながら弓矢を放つ「流鏑馬(やぶさめ)」という武芸がありますが、まさに21世紀の鉄馬による流鏑馬といってもよいでしょう。

【写真】これはSNSに上げたくなるわ…2007年撮影 74式戦車の一般道での様子

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