自衛隊ヘリの「アシ回り」どう決まる? 雪でもないのにスキー装着のワケ

水に浮くヘリコプター 驚きの構造とは

 地面や雪面と違って水面に着水する場合、浸水沈没というリスクが伴います。そのため、常時離着水可能な、すなわち積極的に水面に降り離水できる仕様なのか、それとも非常時に救助が来るのを水面で待つだけ、すなわち1回きりでよいのかにより、機体構造やフロートシステムに違いが出てきます。

 日本国内で積極的に着水できる機体として代表的なのが、陸上自衛隊や航空自衛隊で使用するCH-47J「チヌーク」ヘリコプターです。陸上自衛隊や航空自衛隊では湖や近海で離着水訓練を実施しています。

 アメリカ軍では着水したのち後部扉を開いてゴムボートの出し入れなども行っており、さながら強襲揚陸艦のようです。

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海上保安庁のアグスタ139型中型ヘリコプター。赤い矢印の部分に膨張式フロートが格納されている(画像:@Atsushi Konno)。

 一方、積極的に着水するのではなく、あくまで非常時に、最終手段として着水できれば良いという際に用いられるのが、膨張式のフロートです。

 代表的なのは海上保安庁のヘリコプターで、全機種においてフロートを装備しています。海上保安庁ではフロートを「emergency float」略して「エマフロ」と呼んでおり、そこからもあくまでも緊急時を想定したものであることが伺えます。取り付け方法は機体サイズに余裕のある場合は機体に内部に収容するか、スキッドに取り付けます。

 なお陸上自衛隊のヘリコプターでも、沖縄配備のUH-60JAは洋上飛行が多いため、緊急時を想定して膨張式のフロートが装備されています。また要人空輸用のEC-225LPヘリコプターにも安全性を高める目的から装備されています。

 ヘリコプターは垂直離着陸できる航空機ですが、滑走路を必要としないぶん、様々なところに降りられるよう進化もしているのです。

【了】

【写真】不時着!? いえ訓練です。水面に降りた「チヌーク」

Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)

木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。

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