日本の次期戦闘機開発協力にイギリスのBAEが挙手 同社と手を組むメリットはあるの?

イギリス・BAEと手を組むメリットは…けっこうあるかも?

 日本が企図する次期戦闘機には高いステルス性能が求められており、F-22とF-35を開発して実用化したロッキード・マーチンや、JSF(統合打撃戦闘機)の選定ではF-35に敗れたものの、高いステルス性能を持つ試作戦闘機のX-32を開発した経験を持つボーイングが、インテグレーション支援ではBAEシステムズを一歩リードしているようにも見えます。

 ただ、仮にアメリカ企業が次期戦闘機のインテグレーション企業に選定されたとしても、BAEシステムズをはじめとするイギリス企業と協力できる余地は多分に残されています。

 2020年7月にイギリスで開催が予定されていた「ファンボロー国際航空ショー」は、新型コロナウィルスの感染拡大によって中止となりましたが、その代わりに開催されたWebイベントの「ファンボロー・コネクト」で行われた「テンペスト」に関する複数の会見では、日本と協力できる分野として、エンジンのほかレーダーやアビオニクス(電子機器)などが挙げられていました。

 防衛省は、次期戦闘機に適用するかは将来の動向を踏まえて適切に判断するとしていますが、令和3(2021)年度概算要求で次期戦闘機の項目のひとつに、イギリスとレーダーの共同研究を行なうための経費として41億円を計上しており、つまりレーダーにおけるイギリスとの技術協力は規定路線となっています。

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BAEシステムズが「テンペスト」製造にあたり英国内に設置した新工場「ファクトリー4.0」では、ロボットやVR技術を活用し効率化が図られている(画像:BAEシステムズ)。

 BAEシステムズは、「テンペスト」の製造と運用コストを低減するための「設計へのデジタル技術の活用」「製造および給油、兵装の再装填、修理などへのロボットの活用」、また「コックピットに操縦桿と航空機の制御に必要な最低限度の装置のみを配置し、AI(人工知能)と視認追跡技術の活用により、視線の変更やパイロットの身振り手振りなどで、ヘルメット内蔵式表示装置に表示されるスクリーンやスイッチ類の操作を行う『ウェアラブル・コックピット』」といった、斬新な技術の研究開発も進めています。

 日本の次期戦闘機は2030年代前半から30年以上の運用が見込まれており、これを21世紀半ばになっても陳腐にならない戦闘機としていく上で、アメリカだけでなくイギリスとの協力も積極的に進めていくべきなのではないかと筆者は思います。

【了】

【画像】ゲームではありません ガチ未来な「ウェアラブル・コックピット」

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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