理由は笑えぬ「オナラ防止」 イギリス空軍 みんな大好きベイクドビーンズを食べないワケ

空で食べなければOK? 地上勤務には供されたベイクドビーンズ

 航続距離も飛行時間も短い単座戦闘機などであれば、ひとり乗りのためオナラだけでなく最悪“実”を漏らしてしまっても、本人だけ鼻が曲がり、股間に気持ち悪い思いをすれば済みます。

 ところが複数人で乗り込むような大型の爆撃機などでは、なまじトイレが備わるだけに、敵の領空での緊張状況下で、たとえばパイロットが長時間トイレにこもってしまうなどということにでもなれば、ほかの搭乗員たちは気が気ではありません。もちろん、本来の戦闘配置を離れ、寒空にお尻を出して便座に座っているパイロット自身が一番不安なのはいうまでもないでしょう。

こういった事情を踏まえ、イギリス空軍は1920年代から長らくベイクドビーンズを兵食として用いてきましたが、第2次世界大戦初頭、1940年ごろに飛行前食および機上食のメニューから外す決断をしたのでした。

Large 201124 beans 03

拡大画像

2011年8月、英本土東部にあるイギリス空軍ミルデンホール航空基地に駐留するアメリカ空軍第100空中給油飛行隊で出されたベイクドビーンズ。オリジナルのイギリス風に比べてアレンジされている(画像:アメリカ空軍)。

 とはいえ、ベイクドビーンズ自体は空軍将兵から人気があったため、地上勤務者(グランドクルー)や差し迫った飛行任務のない航空機搭乗員たち向けには、その後も基地食堂での給食メニューとして、提供が続けられたそうです。

 ちなみにイギリス空軍のベイクドビーンズは、航空テクノロジーの発達による与圧室の普及によって飛行前食及び機上食として復権しました。しかし旅客機の機内食としては、与圧室とはいえ地上よりやや気圧が低いのと、多くの乗客のオナラが多くなっても困るので、提供を控えている航空会社もあるようです。

【了】

【写真】空軍だけじゃない。イギリス陸軍も重用したベイクドビーンズの缶詰。

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. 与圧室でも屁の臭いがしますね。 

    簡易トイレとは…ひょっとして排出物を大空に投棄?