旧日本陸軍 海軍にもない高性能クレーン船を運用…なぜ? 「蜻州丸」建造への経緯

潜水艦や空母などを独自に開発、建造していたことでも知られる旧日本陸軍ですが、実は海軍ですら持っていないような、高性能な特殊起重機船(クレーン船)をも建造し運用していました。名前は「蜻州丸」、その数奇な運命をたどります。

太平洋戦争を生き残り終戦後も運用された「蜻州丸」

 太平洋戦争が始まると「蜻州丸」は陸軍の輸送任務に従事し、攻勢期のフィリピン方面への重機材輸送に重宝されます。戦争中はシンガポールを中心に、インドネシア方面で輸送や荷役任務に就いていました。軍艦や輸送船に脚光が当たりますが、こうした「地味な」支援船も居なければ、ロジスティクス網は完成せずその功績は大といえるでしょう。速力10ノット未満の低速船で何度も外洋航行していますが、幸運にも被害を受けること無くシンガポールで終戦を迎えます。

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ボールドウイン機関車を線路に降ろそうとしている「蜻州丸」(画像:国連アーカイブ)。

 進駐してきたイギリス軍は、この便利な船を見逃しませんでした。早速、接収して香港で使用、鉄道機材の荷役で100t近い機関車を揚重している姿の写真も残っています。海運国イギリスでもこの大型クレーン船は重宝されたようで、戦後復興の一助になって働いていたのですが、1946(昭和21)年に香港で台風により沈没してしまいました。

 陸軍と海軍の意地の張り合いで生まれたような特殊起重機船「蜻州丸」は、戦前、戦中、戦後と縁の下の力持ちとして重用されました。一方で「蜻州丸」が本来任務で要塞群に運搬した大砲が実戦で火を吐くことは、ほとんどありませんでした。

【了】

※誤字を修正しました(12月5日14時05分)。

【写真】戦艦「大和」建造にも関わった現役クレーン船「さんこう」

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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コメント

5件のコメント

  1. 戦火を無事くぐり抜けたのに、戦後台風であっけなく…

    とは因果なものです。

    無事復員したのに交通事故で…という方のようです。

  2. もちろん今の陸海空は関係は良いのですよね?

  3. 砲塔砲台には、海軍は積極的に協力してますよ。

    一門に付き100発の砲弾を提供しています。

  4. 楊重→揚重

    • ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

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