「はやぶさ2」のカプセルを「はやぶさ」が運んだ! 大役を「異形の三発機」が務めたワケ
「ファルコン」ファミリー、日の丸付けたことも
その後、この3発機をベースにして、ダッソーは新モデルをデビューさせます。たとえばエンジンを換装した派生型「ファルコン50EX」や、機体の大型化や主翼などの設計変更をし、500機以上の販売実績を持つ「ファルコン900」などです。とくに「ファルコン900」は海上保安庁でも採用されたので、見たことがある方もいるでしょう。
「はやぶさ2」関連でスポットライトのあたった「ファルコン7X」は、「ファルコン900」を形状はそのままに、最新の技術を採り入れて開発されたもの。かつてのように双発機が長距離を飛べない時代でもないにも関わらず、3発エンジンのスタイルとしたのは、安全性を保ちながら航続距離を確保するためと思われます。とはいえ、初飛行は2005(平成17)年と、21世紀デビューの飛行機です。
「ファルコン7X」は、性能的には太平洋も横断できる1万km以上の航続距離を持ち、従来の「ファルコン」シリーズより機内の静粛性も増し、燃費も向上しています。ちなみに、お値段的にも、ライバル機とされるボンバルディア(カナダなど)の「グローバル・エキスプレス」やガルフストリーム(アメリカ)のG550より安いとのことです。
確かに、今回の「ファルコン7X」は、オーストラリアから羽田まで約7,500kmを7時間で飛行し、小さな物体を運ぶには最適の輸送機と言えるかもしれません。とはいえ、誰がこの機体をオファーしたのか私(種山雅夫、元航空科学博物館展示部長 学芸員)は少し気になったりします。
ちなみに、機体を保有するのは、「Brenzil Pty Ltd」というブリスベン(オーストラリア)にあるビジネス機チャーター会社のようで、何度か日本への飛来歴があるようです。
【了】
Writer: 種山雅夫(元航空科学博物館展示部長 学芸員)
成田空港隣の航空科学博物館元学芸員。日本初の「航空関係専門学芸員」として同館の開設準備を主導したほか、「アンリ・ファルマン複葉機」の制作も参加。同館の設立財団理事長が開講した日本大学 航空宇宙工学科卒で、航空ジャーナリスト協会の在籍歴もある。
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