「敵戦艦を撃沈せよ!」WW2で大戦果上げたイタリア特殊部隊の「水中バイク」とは

エジプトの軍港で挙げた大金星 しかも全員無事

 しかも人間魚雷戦隊が挙げた戦果はこれだけにとどまりませんでした。第2号艇は、戦艦「クィーン・エリザベス」(排水量3万600トン)を爆破着底させ、第3号艇はタンカー(7500トン)を攻撃、側にいた駆逐艦(1690トン)を大破させています。

 S.L.C型3艇6名が仕掛けた1回の攻撃で、イギリス海軍は翌1942(昭和17)年7月まで戦艦2隻が航行不能になる損害を出し、一時的にではあるものの、地中海の制海権に重大な影響を被ったのです。しかもこの武勲を挙げた6名は全員捕虜になり、命を失わずに済んでいます。

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初期型の人間魚雷S.L.C.型(上)は、通常魚雷に潜水兵が跨がるような構造だが、S.S.B.型では操縦席に被いが装備され、水中スクーターらしくなっている(吉川和篤作画)。

 イギリス海軍は、6名のイタリア兵を「冷静にして勇敢な冒険者たち」と評価しました。ちなみに、捕虜になったデ・ラ・ペンネ大尉は、1943(昭和18)年9月のイタリア休戦後には連合軍側についた南イタリア王国海軍に所属。しかも前述の1941(昭和16)年のアレクサンドリア港攻撃作戦で授与が決まっていた戦功章金章を実際に大尉に授与したのは、皮肉にも当時、破壊された側であった戦艦「ヴァリアント」の艦長であったモーガン提督でした。またS.L.C.型を捕獲したイギリス海軍は、それをコピーし、似たような水中バイク「チャリオット」を製造して実戦投入しています。

 なおイタリア海軍は、1943(昭和18)年にS.L.C.型の改良発展型として、S.S.B型を開発しています。これは露出した搭乗員席に保護カバーを付けたもので、戦後エジプト海軍がこのS.S.B.型を導入して、1956(昭和31)年のスエズ動乱(第2次中東戦争)では前線配備しています。

 このように、イタリア海軍潜水コマンドが操った水中バイクは、実はその後も各国海軍の特殊部隊に影響を残しているのです。

【了】

イラストで解説 水中バイクS.L.C型の攻撃方法

Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「イタリア軍入門」「上海特別陸戦隊~その兵器と軍装~」など。

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