再度の緊急事態宣言 窮地のバス事業の今後は 従来の災害とは違う 「撤退ライン」引く必要
収束しても需要は戻るか 「シナリオ」の準備を
「コロナ禍」には、地震や豪雨など過去の大災害と異なる点があります。東日本大震災における原発事故の影響を除くと、ふつう、災害そのものは比較的短時間に終息し、その後には、いったん急速に落ち込んだ地域経済が徐々に回復するプロセスが見られます。しかし、「新型コロナ」の問題は、1年になろうという長期間、継続的に被害が出続けています。
そのうえ、危機は全世界同時に発生しました。従来の災害で見られたように「特定の地域の経済が、ガクッと落ち込み、ゆっくり回復」ではなく、日本全体、世界全体で落ち込んだ状態がしばらく続き、収束後には、以前とは少し異なる社会が到来すると考えられます。
では、収束後にバスの需要がどこまで回復するかというと、これは、市場によって異なるでしょう。
たとえば通学需要を見ると、既に高校生以下の需要は「コロナ前」の水準にほぼ回復している一方、大学生では、収束後も一部でリモート講義が残ると考えられます。通勤需要や、高速バスにおける出張、コンサート参加などの需要も、以前の水準まで回復しない恐れがあります。事業者としては、回復度合いが95%なのか、70%なのかで、対応はまったく異なります。
したがって、今、バス事業者に求められていることは、これらの想定を織り込んだ今後のロードマップ(行程表)を準備しておくことです。むろん、想定外のことも多く起こるでしょうが、事前に多くの事態を想定し、対応策の「引き出し」を準備しておけば、そのようなイレギュラーにも対応しやすくなるはずです。
その際には、「収束時期の想定」を「楽観的/中間的/悲観的」の3パターン、また「収束後の需要回復度合い」を同じく3パターンとして、「3×3=9パターン」をベースに考えることが重要です。
9パターンのうち、筆者の考えとしては、まず「バス事業者の体力が持つ間にコロナ禍が収束し、かつ、自社の市場で需要がかなり回復した場合」を、「メイン・シナリオ」とします。高速バスでいえば、需要予測に応じ柔軟に運賃を変動させる「ダイナミック・プライシング」導入など、以前からの取り組みを強化することで乗り越えられるでしょう。
しかし、うまく進まなかった場合の「サブ・シナリオ」にも備える必要があります。
出張や旅行のあり方や価格競争力が変わって、夜行列車が無くなっていったことを思い出しました。
鉄道も都市圏輸送など異なる部門からの内部補助が受けられなくなってしまいますが、リモートで問題なく遂行できた会議などが全部今さら対面式に戻るとは思えません。