再度の緊急事態宣言 窮地のバス事業の今後は 従来の災害とは違う 「撤退ライン」引く必要

最も避けるべき「悲劇のシナリオ」は

 12月24日にオンライン開催された「公共交通マーケティング研究会」第7回例会で、おでかけカンパニーの福本雅之代表は「路線バス事業者は、ピーク(朝のラッシュ)に合わせて輸送力を保有しており、昼間はもともと輸送力が過剰だ。通勤通学需要だけが回復し、昼間の需要が回復しなかった場合、非効率さが増す『悲劇のシナリオ』になる」と指摘しました。

 逆にいえば、在宅勤務や時差通勤の定着で通勤ラッシュを分散させることができれば、運賃収入(売上)はコロナ前より減少したとしても、むしろ事業の効率化が進むことも考えられます。ただ、路線バスにおける「時間帯別運賃」、特にピーク時の値上げや、それによる時差通勤の定着は、バス事業者の工夫だけでは実現しません。制度改正など政策面の支援や、企業や労働者ら社会全体の理解が求められます。

 高速バスにおいても、ウェブ会議の普及や、自宅で楽しめる娯楽の多様化で、出張やイベント参加のための移動が減るリスクがあります。市場の縮小により、鉄道などとの競合が激化し、客単価が下落することで収益性が低下する恐れもあります。

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日常的な路線バスの需要は、2020年秋の段階でコロナ前の7~8割まで回復していた(中島洋平撮影)。

 もっとも、「通信環境の向上により、人の移動が減る」という考えはずいぶん前からありました。しかし、「インターネット元年」と呼ばれる1995(平成7)年と比べ、「コロナ前」時点で高速バスの輸送人員は2倍超に、東海道新幹線や国内線航空も2割以上増加していました。「失われた30年」と呼ばれる経済環境だったにもかかわらず、人の移動はむしろ大幅に増加したのです。

 今回の新型コロナが、日本人の生活様式に大きく影響を与え、収束後も移動の需要は低いレベルに留まるのか、それともワクチンや治療薬が安定供給されるようになれば人は再び活発に移動するのか、今の時点では予測がつきません。だからこそ、安易に予断を持つことなく、今後のロードマップ(行程表)を準備しておくことが重要といえるでしょう。

【了】

【最新グラフ】信じ難い落ち込み 「バスタ新宿」2020年の利用状況推移

Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。

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コメント

1件のコメント

  1. 出張や旅行のあり方や価格競争力が変わって、夜行列車が無くなっていったことを思い出しました。 
    鉄道も都市圏輸送など異なる部門からの内部補助が受けられなくなってしまいますが、リモートで問題なく遂行できた会議などが全部今さら対面式に戻るとは思えません。