豪雪の救世主「陸上自衛隊の雪上車」なぜ雪に強いのか 使い勝手が向上した納得の理由
ひと回り小さくなっただけで使い勝手が段違い
現在、陸上自衛隊でおもに使用されている雪上車は、「78式雪上車」と「10式雪上車」です。両車とも、国内屈指の雪上車メーカーである大原鉄工所(新潟県長岡市)で量産されています。
78式雪上車は、その名の通り1978(昭和53)年に制式化された車両で、10式雪上車は、その後継として2010(平成22)年に採用されたものです。78式は車重が約6.0t、全長5.2m、全幅2.49mで、乗員数は12名なのに対し、10式は車重が約5.0t、全長4.7m、全幅2.3mで、乗員10名なので、78式よりも10式の方がコンパクトになっているのがわかります。
単純に考えると、乗員数が多い方が重宝しそうに思えますが、実はこのサイズの差が使い勝手に大きく影響しています。
それは雪上車の運搬に関係することで、78式雪上車の場合、載せられるのは「7tトラック」や「特大型トラック」(通称:特大)と呼ばれる車両に限られます。しかもそれらに載せる際、履帯(キャタピラ)幅の関係から、「アオリ」と呼ばれる荷台の側面部分を外す必要があります。
それに対し、10式雪上車はひと回り小さな「3 1/2tトラック」の荷台に収まるサイズで、しかも車体側面から履帯が出っ張っている部分が少ないため、アオリ部分を外すことなく載せることができます。なお10式が78式よりも車重が約1t軽くなっているのは、3 1/2tトラックの最大積載量を考慮したからです。
3 1/2tトラックは、全国の部隊に必ず配備されているといっても過言ではないほど、陸上自衛隊ではポピュラーなトラックなのに対し、7tトラックや特大型トラックは配備部隊が限られ、また該当部隊であっても3 1/2tトラックよりも保有数は少ないです。
また、トラックとしての取り回しも車体がコンパクトな方が運転しやすいため、その点でも運搬に従事する隊員にとって負担が少ないといえるでしょう。
昭和基地で使われてる雪上車も大原鉄工所製。