豪雪の救世主「陸上自衛隊の雪上車」なぜ雪に強いのか 使い勝手が向上した納得の理由
2人しか乗れない「軽雪上車」ってナニ?
また、10式雪上車は変速装置がオートマチックになっているほか、車体の向きを変える操向装置もハンドル式のため、大幅に運転しやすくなっています。一方、78式雪上車はマニュアルで、なおかつ操向は2本のレバーを巧みに操って操舵する必要があり、運転には相応の技術を要しました。
このほかにも、フロントガラスが大きくなり、視界が圧倒的に広くなったほか、民生品の流用によってコストダウンも図られているといいます。
これらの理由から、10式雪上車は78式雪上車に比べて大幅に使い勝手が向上しており、現場でも評判は上々のようです。ちなみに10式は78式と比べて乗員数は減っているものの、最大積載量は変わらず1.0tをキープしているため、重量物の積載や牽引などでは78式雪上車と同じように使うことが可能です。
なお、陸上自衛隊では「軽雪上車」という2人乗りの雪上車も調達・運用しています。要はスノーモービルで、オートバイの代わりとして雪中の連絡や偵察、軽輸送などに用います。
ちなみに、民間の雪上車やスノーモービルは、吹雪や積雪のなかでも目立つよう、赤やオレンジなど、派手なカラーリングが施されているモノが多いです。対して、陸上自衛隊の雪上車は、敵に見つかりにくくするよう、雪中迷彩として白一色で塗られています。
また雪上車は、普段あまり見かけない車両ではあるものの、積雪地ではなくてはならない装備のため、その配備エリアは広く、北海道を始めとして東北はもちろん、北陸から山陰地方までの駐屯地や部隊に広く配備されています。
警察予備隊発足当初から連綿と開発・調達されてきた自衛隊の雪上車。あまり知られていないものの、冬季の部隊活動を古くから支えてきた「陰の立役者」といえる装備なのではないでしょうか。
【了】
Writer: 柘植優介(乗りものライター)
子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。
昭和基地で使われてる雪上車も大原鉄工所製。