コロナ後のバスや鉄道を救うか「変動運賃」 「ラッシュ時は高い」は受け入れられる?

なぜ導入するのか? 乗り越えるべき壁も

 繁閑別運賃の目的は、「繁閑の差」の解消です。路線バスなら朝夕、高速バスでは週末に需要が集中しがちです。事業者は、ピークに合わせて輸送力(車両や乗務員など)を保有していますから、それ以外は多くの輸送力が待機状態となってしまい、非効率です。

 そこで、需要が集中する便の運賃を値上げすることで、「別の曜日や時間帯でも構わない人」の利用を、他の便に移るよう促します。また、乗車率が低そうな便の運賃を値下げすることで、新たな需要を生み出すこともできます。

 仮に「新型コロナ」がなくとも、人口減少によって乗客数が減るなか、収益を確保し路線を維持することが求められており、繁閑別運賃はその目玉だと筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)は以前から考えています。

 しかし現実には、中・長距離の予約制高速バスでは活用が進むものの、路線バスや、短距離の定員制(自由席)高速バスでは、繁閑別運賃の導入は進んでいません。乗り越えるべき、3つの壁があるからです。

 まず「法制度の壁」です。高速バスや航空と、路線バスや鉄道では、運賃に関する制度が異なります。高速バスや航空の場合、原則として、事業者自身が運賃を決定し国に届け出ます。

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高速バス新宿・池袋線~長野線はダイナミック・プライシング導入済み。ウェブ予約の場合は便ごとに、かつ予約するタイミングで運賃額が変動(成定竜一作成)。

 高速バスにおいては2012(平成24)年、上限額と下限額の「幅」で届け出ることも認められました。さらに「予約成立後に該当便の運賃が変更となっても、予約時点の運賃額がそのまま適用される」旨を表示しておけば、予約状況に応じて運賃を変えることができます。高速バスでは現在、ダイナミック・プライシングが法的に認められています。

 一方、路線バスや鉄道の運賃は、公共性が大きいため、国が審査をした上で認可する仕組みです。事業者の意思では運賃を決めることができないのです。認可運賃から一定の割引は可能ですが、上回る価格を設定することは、原則としてできません。つまり「昼間を値下げすることはできるが、朝夕ラッシュ時を値上げすることはできない」のです。

【画像】「オフピーク半額」も 海外の公共交通のガッツリ変動運賃

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コメント

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3件のコメント

  1. 変動制運賃ではもし出場の時刻で判定するなら鉄道の責により列車が遅れたらどうするのでしょうか。 

    混雑路線の定期券の割引率を低くして、迂回可能な路線では高くしてはいかがですか。 

    JRが東名阪の私鉄との一部の平行路線で施行している特定運賃を段階的に他の路線の賃率に近づけていくのはどうですか。JR車内の密状態が緩和され増収にもなり得ます。

  2. ある程度の運賃値上げを認め、地方路線までの維持と混雑緩和(及び女性専用車両に関する対立等)が実現されることを願う

  3. 都市交通、私鉄はわかりませんが、民間路線バスは過去にIC化などの口実で時間帯割引回数券を廃止して実質値上げした経緯があるので、もはやオフピーク○割引という余力はないでしょう。
    簡単な手続きで値上げ(ピーク○割増し)を許容する方法を考えてないといけません。