東北新幹線の寸断を人海戦術でつないだ高速バス 舞台裏のドラマ 活きた災害対応の経験

3列シート車をとにかく集めろ!

 東北急行バスは、東武グループの高速バス事業者として、東京駅を起点に、鬼怒川温泉、金沢、大阪、岡山などへ運行していますが、社名が示す通り東京~仙台線は「祖業」です。緊急事態宣言を受け他の路線が運休していたこともあり、全力を仙台線に投入しました。

 地震翌日の14日(日)の昼から続行便を3台追加。その後も、乗務員の出勤シフトを組みなおし、臨時便や続行便を、全て3列シート車で続々と設定しました。

 京王バスは、逆に新宿・渋谷~仙台線を運休していましたが、15日(月)から急きょ再開しました。初日は、道路状況がわからなかったため、念のために交替運転手も同乗させています。永福町営業所長の柏木 洋祐さんは、一連の対応を振り返り、「『営業係』(同社では乗務員をこう呼ぶ)の士気も高く、東北地方の出身者をはじめ仙台線乗務を志願する者が多くいました。私自身も、困っている方の助けになったことで、必要とされている実感がわきました」と話します。

 高速バス事業の歴史や規模では第一級の同社ですが、中距離の昼行路線が中心のため、3列シート車の比率は大きくありません。今回、運休中の大阪線、神戸・姫路線の車両も投入し、京王の高速バスでは初めて、3列シート車4台口による運行となりました。

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3台体制で出庫を待つ東北急行バス仙台線「ニュースター号」(画像:東北急行バス)。

災害時に「足」を担ってきた高速バス

 過去の災害においても、高速バスは、事態に柔軟に対応し人々の足となってきました。東日本大震災の際は、当時の高速ツアーバス各社も含めて、関係当局から「緊急通行車両」の標章交付を受け、高速道路にまだ段差が残る中、被災地から避難する人や、復興ボランティアを輸送しました。

 また2018年の西日本豪雨災害で広島県のJR呉線が長期間不通となった際には、一般車通行止めの自動車専用道路上でバスがUターンする、といった特別なルート設定を認めてもらい、通勤通学輸送の定時制を高めています。1995(平成7)年の阪神大震災では、高速バスが日本海側を迂回して都市間を結んだほか、大都市部である阪神間の鉄道代行輸送にも、多くのバス事業者が協力して対応しました。

【写真】助っ人「東日本急行」東京駅に見参

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