駅そばの名店も相次ぎ消滅 数減らす「駅ナカ&駅前フード」 乗客減で薄利多売に逆風

「薄利多売」が成り立たない…駅ナカ・駅チカの試行錯誤

 これらの駅以外でも、とりわけ乗降客数が多いターミナル駅で立ち食いそばや立ち食いスタンドが相次いで閉店しています。

 渋谷駅「本家しぶそば」(20年9月)、青森駅「そば処八甲田」(21年2月)など、駅舎の改築などでやむを得なかったケースもありますが、コロナ禍による駅そのものの利用者が減少するなか、長い歴史を持つ京成青砥駅「青砥そば」(20年5月)、JR米原駅「井筒屋・在来線ホーム売店」(20年6月)、JR平塚駅と藤沢駅の「カレーステーション平塚店・藤沢店」(20年12月)など、多くの店舗が閉業を余儀なくされました。

 また、駅前に立地する「後楽そば・五反田店」(焼きそばが有名だった)や「小諸そば・京橋店」(1号店)など、長年にわたり親しまれてきた店舗もその歴史に幕を下ろすなど、「駅ナカ」「駅チカ」を問わず苦境が続いているといえそうです。

 そばやカレーなどの立ち食いスタンドは、本来「個食」であり、「同じ空間に長時間滞留する」「大勢の会食」などには当てはまりません。しかし、もともと一定の客数を見込んだ薄利多売のビジネスモデルでもあるため、利用客の減少とともに「駅そば」そのものが成立しづらくなってしまったのではないでしょうか。

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JR藤沢駅構内「カレーステーション」。2020年12月閉店(宮武和多哉撮影)。

 しかし、2012(平成24)年に路線が廃止された青森県の十和田観光電鉄 三沢駅(2019年駅舎解体)で長らく営業を続けていた「とうてつ駅そば」が、駅跡に建設された「三沢駅前交流プラザ・みーくる」に戻ってくるなど、明るい話題も見られます。何十年も昔から変わらない名物のそばを凌ぐほどに美味しい、だしとスパイスがきいたカレーは、状況が落ち着いたらぜひとも食べに行きたいものです。

 また、前出した京成青砥駅のホームで「青砥そば」のあとに「三松そば」が開業したのも、新しい流れでしょう。同店名物の「しいたけそば」はだしとともに丸々煮込んだしいたけが入っており、ちょっとした時間で「プチ贅沢」を味わうには良いかもしれません。

 生活の様式が変わるなかで、「駅ナカ」「駅近」の飲食店舗は感染症対策をしつつ、さまざまな模索を試みています。駅の“新陳代謝”が進むいま、新しい流れを生み出せるかが注目されます。

【了】

【ギャラリー】消える旅情と味 駅そばと駅の風景

Writer: 宮武和多哉(旅行・乗り物ライター)

香川県出身。鉄道・バス・駅弁など観察対象は多岐にわたり、レンタサイクルなどの二次交通や徒歩で街をまわって交通事情を探る。路線バスで日本縦断経験あり、通算1600系統に乗車、駅弁は2000食強を実食。ご当地料理を家庭に取り入れる「再現料理人」としてテレビ番組で国民的アイドルに料理を提供したことも。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅」など。

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コメント

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2件のコメント

  1. 音威子府、遠軽、米原については食ったかな。渋谷も若いころは行ったっけな。
    まあ、こういうご時世もあるし仕方ないのかな、でもちょっと寂しいなあ。

  2. 音威子府の常盤軒といい、遠軽の北一そば屋といい、こういう奇特な年配の方々におんぶに抱っこされっぱなしのまま、その方が居なくなると「はい、それまで」的な姿勢はどうかと思うよ。鉄道会社にとれば、たかが駅ソバ屋かも知れないけど、これを(社員とかに技術伝承させるなどして)磨き上げればものすごい客寄せツールになると思うんだけどね。
    「鉄道会社だから関係ない」なんて姿勢のままだと、いずれ本体の方も同じ道を辿るんじゃないか?