輸送機にもあるスクランブル 空自C-2輸送機の新型コロナウイルス患者搬送訓練に密着
装備は特別でも普段どおりに…C-2輸送機での新型コロナ患者搬送訓練
島根県や隠岐地区は感染者数が少ないこともあり、これまでC-2の出番はありませんでした。それだけに今回の実機を使っての、医療関係者も交えた訓練を実施することは貴重な機会です。松江市消防本部、隠岐広域連合消防本部、島根県立中央病院、隠岐保健所から参加者が集まり、乗り込んだ医療関係者は慣れない輸送機内での機器類の配置や使い方を確認し写真、動画に収めていました。
C-2機内には担架固定用架台が用意されていましたが、架台も担架も特別のものではなく、通常の患者輸送でも使われていて、常にC-2機内に収納されているものです。しかし今回は感染症患者搬送対応(訓練)ということで、患者収容器(カプセル)のほか、陰圧除菌装置、陰圧モーター、電源装置、バッテリー、バイタルモニターなどを載せた担架も別に用意されました。この重装備を見るだけでも、感染症対応の難しさが理解できます。C-2の機内は充分広く、作業性を妨げることはなかったようです。
C-2の搭乗員もタイベックスーツ、防護マスクを着用して、万全の感染防止策を取ります。しかし基本、やる事に変わりはありません。マイクやヘッドセットもやや扱いづらいようですが、運用に支障はないようでした。新型コロナウイルス感染症といっても気にしすぎることなく、通常と同じように安全確実な運航を心がけたといいます。
通常、急患輸送は消防、海上保安庁などの機関の任務です。自衛隊は、それらいずれもが対応できない時の「最後の砦」といわれます。今回の訓練は好天に恵まれて順調に行われましたが、実際には悪条件下の要請が多くなります。何が起るか分からない緊張感は、戦闘機も輸送機も変わりません。
こうした訓練でC-2が隠岐空港に姿を見せることは、離島住民に大きな安心感となっています。戦闘機も輸送機も、「安心」という重要な任務を背負っていることに違いはありません。先に紹介した手紙に「不謹慎にも笑みがこぼれた」と書かれていますが、「最後の砦」の意味を余すことなく表現しています。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
コメント