海戦はスピード勝負! 艦艇の速力は海戦で「カタログ値」どおりだったのか?

かつて軍艦は、その速力が戦果を左右する重要な要素でしたが、カタログスペックと実測値とで大きく異なることが多々あります。近代戦艦のスピードを比較します。

戦艦「大和」の最高速度は、カタログ上では27ノットだった

 世界最大の戦艦として広く知られる旧日本海軍の戦艦「大和」。この艦はカタログスペック上では最高速度27ノット(約50km/h)といわれますが、乗組員の証言では29.3ノット(約54.3km/h)まで出したことがあるという話も。

 一方、アメリカ海軍に目を向けてみると、アイオワ級戦艦は公称33ノット(約61.1km/h)とされているものの、大戦後の1968(昭和43)年には35ノット(約64.8km/h)台を記録したことがあります。

 このように、軍艦のスピードはカタログ値と実測値で大きく異なることが多々あります。そこで、近代戦艦に限定しつつ最大速度を比較・解説します。

Large 210322 speed 01

拡大画像

1978年10月、フィラデルフィア海軍基地に係留される、写真右から戦艦「アイオワ」、戦艦「ウィスコンシン」、空母「シャングリラ」(画像:アメリカ海軍)。

 そもそも第2次世界大戦までの軍艦同士の海戦は、基本的には目視で敵艦を見ながら、自艦の大砲を撃ったり魚雷を放ったりするものでした。軍艦の速力には重要な意味があったといえるでしょう。

 実例として、第1次世界大戦中の1915(大正4)年に起きたドッガーバング海戦を挙げましょう。この海戦では、イギリス艦隊とドイツ艦隊が戦火を交えましたが、このときイギリス艦隊は、最高速度27.5ノットから28ノット(約50.9km/hから51.8km/h)の巡洋戦艦3隻でドイツ艦隊を追撃しています。

 ドイツ艦隊は巡洋戦艦2隻が27ノットから28ノット(約50km/hから51.8km/h)と高速でしたが、旗艦「ザイドリッツ」は最高速度26.5ノット(約49km/h)、装甲巡洋艦「ブリュッヒャー」は同25.4ノット(約47km/h)とやや低速でした。

 このときイギリス艦隊にも最高速度25ノット(約46.3km/h)代の巡洋戦艦2隻がいました。しかし、遅い2隻を連れているとドイツ艦隊を取り逃がすと考えたイギリス側は、高速の3隻だけで追撃しています。

 ドイツ艦隊の判断は「イギリス艦隊は艦隊の速度を、25ノット台の遅い巡洋戦艦2隻に合わせるだろうから、我が艦隊に25.4ノットのブリュッヒャーがいても逃げられる」というものでした。が、イギリス側は速い3隻で打撃を与えて、ドイツ艦隊の速度を落とせばいいと判断したのです。結果としてブリュッヒャーは撃沈され、ザイドリッツも大破しています。

 もし、イギリス側の速い巡洋戦艦が1隻だけだったら、袋叩きに合うことを警戒して、遅い艦に合わせて行動し、ドイツ艦隊を取り逃がしていたかもしれません。

 逆に、ドイツ艦隊全艦が29ノット(約53.7km/h)で動けたなら、イギリス側は攻撃手段がなかったともいえます。

【写真】「世界最速」の駆逐艦

最新記事

道路交通情報(外部サイト)

  • 「最新の交通情報はありません」

コメント

2件のコメント

  1. 金剛型戦艦4隻が実質唯一の使える戦艦だったのだ。そしてそれは太平洋戦争唯一の戦艦対戦艦にてアイオワ級に叩きのめされたのだ…!

  2. 最大戦速25ノットの地方護衛艦に乗り組んだ事がありますが
    第3戦速(24ノット)でのハープーン甲板(後部甲板)から眺めます、盛り上がるウェーキー
    「キーン」というガスタービンエンジンの音、それらは圧巻でした。

    現在、新日本海フェリーの航海速力30.5ノット(56.4km/h)との事ですが
    秒速(風速)15.6mにもなると、上甲板は風圧でまともに歩けませんね。
    航路上で漁船、漁網ブイ、漁網標識、まれにアシカと遭遇したり、イルカと並走したりしますが
    緊急回避が難しい速力だと思いますので、貨客船とはいえ安全航海を祈願して、やみません。
    面白い記事ですね、ありがとうございました。