コロナ禍が去ったときに向けて鉄道事業者はどう対応すべきか 現状の姿から考察する

コロナ禍のいま、鉄道事業者はこれまでにない苦境に立たされています。利用者の減少により旅客収入は激減。終電の繰り上げをといった列車減便などの対応を行っていますが、これから先、鉄道事業者はどうしていけばよいのでしょうか?

この記事の目次

・軒並み輸送量が減少
・鉄道事業者はどうしたらよい?
・もうひとつのとるべき道
・ローカル線はどうなる?

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軒並み輸送量が減少

 コロナ禍により鉄道事業者の置かれた環境は大きく変化しました。例えば、国内最大の鉄道事業者であるJR東日本の場合、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響を受けていない2018年度の輸送量が約1376億人キロ(輸送人員×乗車距離の単位)だったのに対し、2020年度は約846億人キロと4割近く落ち込みました。特に新幹線の輸送量が2018年度に対して3分の1に減少したことが大きく響いています。

 私鉄を見ても、国内最長の営業キロを誇る近畿日本鉄道は、2018年度の輸送人員が約5.8億人だったのに対し、2020年度は約4.3億人。東京メトロを除けば最も利用者の多い東急電鉄も2018年度が約11.9億人だったのに対し、2020年度は約8.1億人と、JRほどではないにしても2割から3割ほど落ち込んでいます。

 鉄道事業者にとって2010年代は「春」そのものでした。リーマンショックや東日本大震災の影響でどん底にあった国内景気はようやく回復傾向を見せ、レジャー需要の拡大や訪日外国人旅行者の急増が定期外利用を後押しします。輸送人員は右肩上がりで増え続け、毎年のように「過去最高益」を記録したと報じられました。

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JR東日本をはじめ、鉄道事業者では列車を使って生鮮食品などを輸送する取り組みを始めている(2019年6月11日、草町義和撮影)。

 ところがコロナ禍により一転して各社は大幅な赤字に落ち込むことになります。2020年度の純損失はJR東日本が約5779億円、JR西日本が2332億円、JR東海が約2015億円で、3社合わせて1兆円を超える赤字を記録しました。

 大手私鉄も全社が赤字に転落。西武ホールディングスの約723億円を筆頭に、近鉄グループホールディングスが602億円。東急が562億円、東京メトロが529億円と4社が500億円を超える赤字を計上し、大手私鉄16社の合計では5000億円近くにも上っています。鉄道事業はコロナ禍をどう切り抜けていけばよいのでしょうか。

 もちろん新型コロナは100年前の「スペイン風邪」に並ぶような、まれに見る世界的なパンデミックです。今年度下期にかけてワクチンの接種が進めば、来年から経済活動を一定水準に復旧させることができるという見方もあるように、この異常事態が今後も永久に続くわけではありません。

 しかし鉄道事業者が恐れているのは、いいえ、正確に言えば望むと望まざるにかかわらず受け入れざるを得ないのは、新型コロナをきっかけとした行動の変容です。

 東京都が実施した調査によると、2021年1月から3月までに発出された2回目の緊急事態宣言の期間中、テレワークを実施したと答えた都内企業の割合は半数を超えており、従業員300人以上の企業に限れば8割近くに達しています。

 テレワークの実施回数も週3日以上と回答した企業が半数近くになるなど、コロナ禍を通勤のスタイルそのものが大きく変わろうとしています。この結果、何が起きるかといえば通勤で鉄道を利用する定期利用者、そして出張や業務で利用する定期外利用者の減少です。

 実際、東急は2020年度決算説明会で、「今後の輸送人員の回復予測に関しては、2023年度までに定期外旅客は従前水準に戻ると想定しているが、定期旅客においては従前の70%程度しか戻らないと考えており、輸送人員全体では従前の 85%程度となる想定」と説明しています。

 JR東日本も同じく2020年度決算説明会で、コロナ前と比較して関東の在来線は約85%、新幹線は約80%の水準で推移するとの見方を示しており、少なくとも通勤利用はコロナ前には戻らないというのが鉄道業界の一致した見解です。

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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

東京メトロ勤務を経て2017年に独立。江東区・江戸川区を走った幻の電車「城東電気軌道」の研究や、東京の都市交通史を中心としたブログ「Rail to Utopia」を中心に活動をしている。鉄道史学会所属。

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